郵便局員「お金の犯罪多発」の何とも呆れる実態 局長・部長ですら横領・窃取の犯罪に手を染める

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昨年だけで計21人、3.7億円もの「横領・窃取」不正が発覚した(デザイン:池田 梢)

「かんぽ生命保険」や「ゆうちょ銀行」の不祥事ばかりが注目されるが、実は郵便局での不祥事は他にもある。横領や窃取といった単純で発覚しやすい犯罪だ。局長や部長など不正を防止する立場にある管理職の犯罪も少なくない。

『週刊東洋経済』は2月8日発売号で「郵政崩壊」を特集。「国有民営」企業のいびつな構造をはじめ、露呈したずさんな体質、その温床となっている「多重統治」、描けぬ成長戦略などを追っている。

堺で1.3億円横領、佐久で0.7億円窃取…

大阪府堺市にある堺中郵便局の元総務部長(56)が昨年12月、大阪府警に逮捕された。料金別納郵便の支払金として顧客から受け入れた郵便切手1億3300万円相当、1000円切手13万3000枚分を、裁断処分したかのように装って横領し、金券ショップで換金していた容疑だ。元総務部長に対する国税局の調査が行われたことで発覚した。

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同月には長野県・佐久郵便局の窓口営業部長(45)も逮捕されている。同19日午前2時40分頃に同局へ侵入。金庫に保管中の現金7000万円を窃取した容疑だ。局設置の防犯装置が作動し、警備会社から110番通報されたことで発覚したという。

同年5月には福岡県・早良南郵便局の渉外担当の期間雇用社員(68)が、検察庁へ送致された。福崎容疑者は同年3月に逮捕されていた。2017年12月〜2019年10月までの間に顧客から受領した貯金預入金のうち計9260万円を、受け入れ処理せずに横領した容疑だ。

日本郵便の各支社が公表しているプレスリリースによれば、これらを含めて日本郵便では昨年1年間で計3.7億円、計21件の横領・窃取などの不正が起きている。うち2件が郵便局長、3件が部長による犯罪容疑だ。

一昨年10月には東京都内の郵便局幹部2人が計約5.4億円の着服を3年にわたって行っていたことが報道で発覚し、世間を驚かせた。日本郵便はそれまでほとんどの横領や窃取を公表してこなかった。この事件も料金別納の代金として支払われた切手を裁断処理せずに横領したものだ。1人は芝郵便局の課長(40代)、もう1人は神田郵便局の課長代理(50代)だった。

これを機に、総務省は全不祥事を速やかに公開するように指導した。昨年は原則公開となってから最初の年だった。

ちなみに堺中、早良南の2人に加えて、5.4億円横領の2人の計4人は懲戒解雇処分となっている。ただし5.4億円横領の2人は全額を返金済みだという。佐久の営業部長は懲戒処分が必至。芝局の総務課長については告訴状を提出、神田局の課長代理については告訴すべく警察と相談を継続中だが、2人とも逮捕には至っていない。

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