戸建ての販売価格は竣工するまではほとんど変わることがない。しかし、竣工すると月数を重ねるごとに1%強下落していく。5カ月もすると、-8%を超える。例えば、4棟売っている現場で、竣工前に売れた2棟は当初価格、残りの2棟は下がった最新価格をベースに取引されることになることがある。この差が先ほどの8%超になることも多い。
着工から竣工まで3カ月とすると、竣工後6カ月は着工から9カ月経過していることになり、その前の土地取引や契約から引き渡しまでの期間まで考慮すると、竣工後6カ月は借り入れの返済期限にかなり近いタイミングということになる。何としても売り切らないといけないタイミングである。
とにかく安く新築を買いたいというなら、このように売れ残りを狙うのがわかりやすい1つの方法となる。そこで真っ先に見るべきものは、物件広告の竣工年月になる。これが価格に直結するからである。
首都圏平均売出価格4000万円の8%は320万円なので、かなり高額な差となる。そもそも同じ立地の物件で、間取りや日照条件や接道状況などの違いは当初価格に反映されて売り出されるのだから、この値引き幅は単純に安く買えたことを意味する。
売り主側からしても売れ残りを買いに来てくれる顧客はありがたい話だ。売れないことには金融機関からの借り入れが返済できなくなるのだから、値引いてでも売らなければならない。なので、相場はあっても売れ行きで価格は大きく変動すると思っておいたほうがいい。
新築着工戸数が減る中で価格が上昇する可能性
2021年初の現在、首都圏の在庫は2.5万戸(販売5カ月分)と適正水準まで少なくなっていると書いた。売れ行きに対して新規供給が毎月1000戸少ない水準が続いており、この状況があと数カ月続くと在庫が月の販売戸数の4カ月分ほどに近づく。
こうなると、着工から3カ月で竣工するまでの間に相当数が売れるので、竣工後の値引き物件が少なくなる。供給側からすると在庫が少ないときに売り急ぐ必要はないので、当然値引き幅が小さくなる。
マンション市場もそうだが、価格と供給戸数は反比例の関係にあり、それらを掛け算した総販売額(市場規模)はつねに一定となるものである。アベノミクス以降、マンション価格は1.5倍になったものの、分譲戸建て価格はほぼ横ばいだった。その価格が値上がりを始める可能性が出てきた。土地の仕入れに苦戦している状況からすると、仕入れの土地価格は上がりやすい。これは売り出し価格に徐々に反映されることになるであろう。
価格を上げても売れ行きさえ維持できているならば、供給側は供給量が減る中で利益額確保のために値引き幅は小さくなる可能性が高い。マンションと比較して割安感がある戸建てを購入するなら、今年は早いほうがお得ということを念頭に置いて購入戦略を考えたほうがいい。
そして、値引きされる物件も少なくなりそうなので、竣工から期間が経過している物件を広域に探して買うなら、動き出すタイミングを早くした者勝ちなのである。
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