富士通の大混迷、「社長解任」全構図 無限ループにはまり込んでしまった
暴力団の実名まで挙げた山室惠監査役は、リクルート裁判、オウム真理教裁判などを担当した元裁判官であり、野副氏は暴力団の関与を最近まで疑わなかったという(山室監査役は本誌取材に対し、「実際と違っており野副氏の作文が多々ある」としながら、どの点が違っているかなど「個々の内容についてはコメントできない」と回答)。
山室監査役や大浦取締役の言葉を信じた野副氏。しかし、代理人を依頼した畑敬弁護士によるヒアリング調査の結果を受け、「○×組系の反社会的勢力が付いている」ことはまったくないとの判断に至る。そこで、虚偽の事実の告知に基づく辞任強要のため、辞任の意思表示を取り消せば、民法96条に基づき取締役への復帰は可能と通知した。
要求の第2点は、3月12日までの臨時取締役会開催。その場で、辞任取り消し承認と富士通のガバナンスが機能しなかったことについての調査開始を求めた。しかし、3月6日の臨時取締役会に野副氏が呼ばれることはなかった。
なお正確性が疑われる3月6日の開示内容
同日、富士通は解任の発表と合わせて「一部報道について」という長文のプレスリリースをウェブ上に開示した。これは昨年9月25日の社長辞任理由を、従来の「病気」から訂正したものだ。
リリースに記された辞任理由は、野副氏側の「辞任取消通知書」に記載された内容に合致する。そのため、リリース文に辞任取消通告書に記された実名を当てはめることができる。次ページ、辞任理由の要点部分に実名を入れて見ていこう。
(1)「2009年2月ころ、野副氏と長年にわたり親交の深い人物(鳥井洋一氏)が代表取締役をつとめる企業(サンドリンガム・プライベートバリュー、以下SPV)が、野副氏の推進していたプロジェクト(ニフティ売却案件)の一部に関与しておりました」