小田急8000形、最後の「白い通勤車両」の存在感 機器更新で今なお主力、旧型制御の車両も残る

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8000形の歴史でユニークなのは、特別な塗装を施した車両の存在だ。中でもインパクトが強かったのは、白地に赤・黄・茶色の3色を階段状に配した「ポケット号」だろう。1984年に登場し、愛称は公募により決定。1987年まで約3年間この装いで運行し、通常の車両とまったく違う派手なカラーリングは沿線利用者の注目を集めた。

赤・黄・茶の派手な塗装で注目を集めたポケット号。当初は「走るギャラリー」のマークを付けていた(写真:小田急電鉄)

ポケット号のほかにも、向ヶ丘遊園(閉園)で開いた「蘭・世界大博覧会」のPR電車「オーキッド号」(1986~1987年)や、小田急百貨店開店40周年記念カラー(2002年)など、8000形は特別塗装に抜擢されることが多かったようだ。2019年にも1編成が「江ノ島線開業90周年記念トレイン」として、江ノ島線にちなんだ図柄の装飾を施して走った。

デビューから約20年が経過した2002年度からはリニューアル工事が始まった。最初に更新されたのは、新宿側の先頭車が「8251」と「8255」の6両編成2本。大きく変わったのは車内で、座席は1人ずつのスペースを区分した赤いバケットシートに交換、壁面や床も色・柄を一新した。ドアの上にはLED式の案内表示器を設置、吊り手も丸形から三角形に変わった。

2003年度以降のリニューアルはさらに大がかりで、制御システムを当時増備中だった「3000形」と同タイプで省エネ効果の高いVVVFインバーター制御に更新。性能面は新車と同等に生まれ変わった。リニューアルは2013年度に完了し、8251・8255の2編成を除く全編成が制御システムを一新した。

今も主力の一角として

小田急は2000年代以降、旧型車両の置き換えを急ピッチで進めるとともに8000形の更新を推進し、VVVFインバーター制御車両の比率を高めてきた。2018年に長年の人気車両だったロマンスカー7000形LSEが退役すると、旧型の制御システムで残るのは小田急全車両のうち「界磁チョッパ制御」の8251編成・8255編成だけになった。

6両編成で各駅停車として走る8251編成=2018年6月(記者撮影)

一見するとほかの8000形と変わらないが、原型をとどめる編成とあってか、鉄道ファンには注目の的に。2019年11月には小田急トラベルが同車両を使った「8000形界磁チョッパ車で行く!鉄道体験ツアー」を実施するなど、人気の高さがうかがえる。8255編成は2020年10月に廃車され、残るのは8251編成のみだ。

2021年2月1日時点で、8000形は6両編成14本・4両編成16本の計148両が在籍。各地の鉄道で1980年代生まれの車両が引退しつつある中、リニューアルによって生まれ変わった8000形はいまも主力の一角として活躍する。

「『小田急らしい』外観の車両だなと思います」と桐山さん。ステンレス製の後輩車両が幅を利かせる中、白い車体のベテラン車両は今日も力走を続けている。

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小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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