加害者調査に見た「わいせつ教員」の思考の誤り 保護者の声と加害者調査から考える(後編)
奈良大学の社会学部心理学科で教鞭を振るう今井由樹子准教授。今井氏が今取り組んでいるのは、加害者への調査だ。
今井氏は22年間にわたり少年警察補導職員として、非行の最前線に携わってきた。そこから臨床心理学を学び直し、スクールカウンセラーとして学校現場に入る。長年、『性加害者となった教員』への聞き取り調査を続け、要因やメカニズムを解明し予防策を探ってきた。そんな彼女の思いも被害者やその家族と同様に「被害者を生みたくない」というものだった。
「加害者の目線」で考える人は少ない
「被害者の支援に取り組む人は多いけど、加害者の目線で考える人は少ないでしょ? 何より警察時代に感じたのは、虐待や家庭環境など“被害体験”から非行に走る子どもが多いという事。非行という行為は迷惑をかけるので『加害者』でもあるけど、同時に『被害者』という側面も持ちます。行為をやめるには、加害者と被害者、どちらの考えも知らなければならないと気付いたのです」(今井氏)
被害者支援とは違う“加害者心理”からわいせつ教員問題と対峙する今井氏が、警察と学校、両方の現場経験を生かし、現在完成を目指しているのが『教員の性行動セルフチェック表』だ。
今井氏は、中部地方の公立小中高校と特別支援学校の教員計875人にアンケートを実施。並行して十数名の“性加害教員”にも同様の回答を受け、その結果を分析する。
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