在宅勤務で「残業代が出ない人」が知るべきこと 「何かがおかしい」と感じている人へ
一方、在宅勤務時は自宅ですので、仕事中に私的行為がどうしても紛れ込んできます。
例えば、在宅勤務中に雨が急に降ってきたので、洗濯物を取りに行った最中に階段で転んでケガをした場合などです。
こういった私的行為中にケガなどをした場合はあくまでも業務が原因でケガをしたわけではないため、労災は認められません。
なお、在宅勤務でずっと座りっぱなしで腰痛になったようなケースは、本人の特質もありケースバイケースで何とも言えませんが、一般の労働者が同じような環境で仕事をしていたら、腰痛になるような状況かどうかという視点で、労働基準監督署が調査のうえ、判断することになります。
通勤手当が支給されなくなった場合
在宅勤務によって会社へ通勤する必要がなくなったり、会社へ出勤する頻度がかなり少なくなったため、通勤手当を従来どおり支給しなくなる会社が増えています。
そもそも、通勤手当については、法令などによって、支払いが義務付けられているものではありません。あくまでも、会社が自社のルールブックである就業規則に定めたルールに従って通勤手当を支給しているだけです。
したがって、就業規則において、通勤手当が「通勤に係る費用に対して支給する」趣旨である場合は、実際に通勤行為に対してその実費相当分を支払うことになるので、在宅勤務に伴って通勤しなくなった分は原則支給されなくなるということです。
ところで、在宅勤務で、通勤手当が少なくなった方は社会保険料が下がる可能性があります。なぜなら、社会保険料は標準報酬月額(ひょうげつ)という仕組みで計算されていますが、この標準報酬月額は通勤手当を含めて計算されているからです。
なお、「ひょうげつ」とは、社会保険の事務処理を簡略するために考えられた仕組みで、給与をおよそ1万円から6万円の幅で区分した等級であり、健康保険は139万円、厚生年金は65万円が上限になっています。
社会保険のあらゆる場面で使われる重要なキーワードで、自分の「ひょうげつ」がわかればいろいろな計算ができます(詳しくは過去記事「給与が減ったと思ったら「この表」を見よ!」をご覧ください)。
例えば、静岡から新幹線で通勤していた場合は、定期代が1カ月13万6330円になるので、月給が30万だった場合は、月給30万円に13万6330円が加算され、43万6330円が報酬月額となり、等級表に当てはめると、ひょうげつは44万円となります。
そのため、社会保険料は、健康保険料が月額2万1714円(協会けんぽ東京支部R2年度〈介護保険料なし〉)、厚生年金保険料が、月額4万0260円になります。
一方、在宅勤務で通勤手当が0円になった場合は、ひょうげつは定期代を含まない月給30万円として計算されます。健康保険料が月額1万4805円(協会けんぽ東京支部R2年度〈介護保険料なし〉)、厚生年金保険料が月額2万7450円になるので、月額1万9719円も社会保険料が安くなることになります。
もちろん、社会保険料が安くなるぶん、ケガや出産時などの所得補償や将来の年金額も下がることになるので、その点は一応押さえておいてください。
なお、通勤手当が変更されたタイミングにもよりますが、多くの会社は10月給与から社会保険料が見直されます。ご自身の給与明細を一度、確認してみてはいかがでしょうか。
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