「コタツ記事」を重宝するWebメディアの大迷走 「取材なき記事」や「ネタの盗用」が許される理由
【問題その2:記事の均質化】
PVを集めるための成功法則が1つある。それは、「1次情報でPVが多かった記事や、多くシェアされた記事に関連したものを即座に出す」ことだ。
たとえば、とある日の午前中に「阪神のジャスティン・ボーアが惜しまれながらも退団へ」というストレートニュースが爆発的に読まれ、Yahoo!ニュースのコメント欄やツイッター、5ちゃんねるでも大きな話題になっていたとする。
ネットでの反応を見ると、「まだ1年で切るのは早い」「あのパワーは2年目に覚醒する可能性があるから勿体ない」というものが多い。さらに、ボーアは真面目で日本に溶け込もうと努力している様が見えること、ホームランの後の「ファイヤーボールパフォーマンス」など明るい性格がファンに受けていることもわかる。
となると、優秀な編集者は何を考えるかというと、「今ボーアを切るのはもったいない」という論調の記事を出すことである。
ボーア退団報道後、どんな記事が出された?
実際に2020年10月23日にボーアの阪神退団が報道された後、ネットニュースで配信された記事の一部を並べてみよう。
②阪神、退団濃厚ボーア残すべきだった? 高年俸ネックも「適応しようと努力していた」(AERA dot./2020年11月12日)
③ボーア、来季も日本希望 阪神退団決定的も親日家は他球団へ移籍模索(デイリースポーツ/2020年11月19日)
④“大化け”あるぞ! 阪神退団ボーア、獲得候補はDeNAが一番手 巨人らも参戦か(AERA dot./2020年11月25日)
⑤阪神退団のボーアは来シーズン日本に帰ってくることができるのか!?(ラブすぽ/2020年12月1日)
⑥阪神退団「ボーア」は十分使える…チーム事情から獲得した方がいい球団は4つ(デイリー新潮/2020年12月5日)
⑦「ボーアで良かったのに…」になる恐れも?阪神の助っ人戦略に感じる“疑問”(AERA dot./2021年1月11日)
編集者は、こうしたネットの「風」や「傾向」を常に読んでおり、うまくそれに乗った記事を出せばPVを稼げることを知っている。だからこそ、「今ボーアを切るのはもったいない」という記事が多数配信されたのだ。
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