会社からのあてがいぶちの仕事では意味がないと思っているサラリーマンは少なくない。しかし、何でも自由に好きなことをやれと言われると、かえって難しいものである。会社を離れて自分の得意なものを探すという選択肢は、多くの人の場合、現実的ではないだろう。
とはいえ、40年間の会社生活の間、会社がずっと面白い仕事を与えてくれると考えるのは期待しすぎである。まずは、今、取り組んでいる仕事から、何かできないかと発想するほうが明らかに生産的だ。
私が出会ったイキイキ働くサラリーマンは、皆、足元の仕事を大事にしている。3度の飯よりも人に会うのが好きな営業マンや、寝食を忘れて研究に没頭できる技術者、人の成長を見るのが何より好きだという研修役も、自分の仕事に、いろいろな工夫や努力を惜しんでいない。中には、役員に「この部署に異動させてほしい」と頼んだり、次に働きたい職場の部長に自ら直談判にいく社員もいた。
働かないオジサンになるか、ならないかを分ける第1の分岐点は、足元の仕事を大切にしているかどうかだ。イキイキと働いているオジサンは、若い頃には会社人間だった人が多い。質の高い仕事を目指して、いろいろ努力、工夫することは、人生の後半戦になって、選択肢を増やすことにつながることも間違いない。
2.複数の自分を抱え込めるか
足元の仕事に注力することは大事であるが、強くコミットしすぎると、自分の生活や家族をないがしろにする場合も少なくない。
自分の生活や家族を切り捨てた仕事中心のスタイルは、表面的には力強いように見えても平板で変化に乏しい。また脆弱でもろいものになりがちである。結果として、変化に対応できずに、働かないオジサンになるリスクも高まることになる。
仕事に注力する自分、仕事以外に関心あることに取り組む自分、家族や昔の友人を大切にする自分を、自らの中に同時に抱え込んでおくことが重要である。仕事と生活について言えば、両者を区分するのではなく、相互の良循環をどのようにして生み出すかがポイントなのである。
資産運用では、リスク軽減の観点から、分散投資する手法は常識なのに、仕事になるとそう考えないサラリーマンが少なくない。「仕事本位でなければならない」「本業はひとつしかない」と思い込んでいるのである。どちらかがうまくいかなくても自分を保てるように、複数の自分を抱え込むことは、極めて重要なのである。加えて私は、この複数の自分の中に、過去の自分と未来の自分も入れて考えるべきだと思っている。
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