例えば、4月からコロナ患者を受け入れている東京都内の病院(200床)では4~6月期の利益は落ち込んだものの、8月から補助金が入ったことで、11月時点で前年比で約1割の増益に転じている。伯鳳会の古城資久理事長は、「すべての疾病や外傷患者が減少する中、増加していたのはコロナ患者だけだ。コロナ患者を受け入れる方向で試算をしたら、むしろ短期的にはプラスになることが期待できた」と話す。
収益に貢献したのが、PCR検査の内製化だ。PCR検査機器の購入経費には補助金が支給される。検査機器の導入で20~40分で検査ができるようになり、コロナ患者を受け入れる5つの病院に発熱外来を設置した。全病院で外来患者数は減っているが、発熱外来のPCR検査で単価が向上したことにより、収益の落ち込みをカバーできているという。
医療スタッフに2万円の「危険手当」
伯鳳会では、こうした利益を医療スタッフへの手厚い危険手当として還元している。PPE(個人防護具)で対応するスタッフには1勤務当たり2万円、コロナに関係するスタッフには1勤務当たり1万2000円を支給している。東京都では、コロナに携わる医療従事者の危険手当として、1日当たり3000円分を補助しているが伯鳳会はそれ以上だ。
「5病院で月間3000万円程度の(コロナに関連する)危険手当を見込んでいる。コロナ患者の受け入れで、(通常の急性期疾患の治療を行う)一般急性期の診療報酬に2万1000円(1日当たり)が上乗せされ、ほかに空床補償もある。上乗せ分は感染対策の管理費としてもらっていると理解しているが、物品は自治体から現物支給されるものも多い。民間病院なら危険手当を支払っても、やっていけるはずだ」(古城理事長)
しかし、もし院内で集団感染(クラスター)が起こり、コロナ病棟以外のところからスタッフを集めることで危険手当が増えれば、収益は赤字になるという。
医療機関がコロナ患者を受け入れるうえで、最も懸念されるのがクラスターだ。ひとたびクラスターが起これば一時閉院を余儀なくされ、病院の損失は大きい。伯鳳会では病院ではないものの、過去に痛手を負ったことがあった。2020年4月、グループの特別養護老人ホームで51人のクラスターが起こったのだ。だが、すでに同グループでコロナ患者を受け入れていた病院と連携し、約2カ月で収束した。
クラスターのリスクとはつねに隣合わせだが、古城理事長は「コロナから逃げ回れば、(むしろ)クラスターを起こすリスクは上がる」と言う。
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