オリラジ藤森が今語る「あっちゃん」との出会い 意気投合した「バイト先のスター」と「チャラ男」
あっちゃんの部屋には、棚一面を覆い尽くすほどの膨大なDVDが置いてあった。そのすべてがお笑い芸人のライブやバラエティ番組だった。
「こういうの、好きなわけ?」
「ああ、高校時代からずっとな」
趣味ひとつとっても、これほどまでに突き詰めて打ち込むものなんだな。そういうストイックなところも自分にはまったくない一面でおもしろい。ぼくはひたすら感心しながら、
「どれがおもしろいの? いちばんおもしろいの観せてよ」
と無邪気に頼んだりしていた。自分もお笑いの世界に行きたいとあっちゃんが野心を燃やしていたのがそのコレクションに表れていたにもかかわらず、ぼくはそのことにまったく気づかなかった。
運命を変えたビデオテープ
ある日、いつものようにあっちゃんの部屋でゲームをしていると、1本のVHSビデオテープが棚に置いてあるのが目についた。
「なにが録画してあんの、これ?」
と訊けば、あっちゃんが大学1年生のとき学園祭で漫才をやった記録だという。
「なにそれ、初耳! 自分で漫才やったことまであるの?」
ぼくはすごく驚いて、
「これ観ようよ、なあ観せてよ」
とねだった。あっちゃんはすこし渋ったけれど、やがてあっさり折れて、テープをデッキに滑り込ませた。
案外あっちゃんのほうも、慎吾にはいつか観てもらおうかな?と心のどこかで思っていたかもしれない。ごく短い漫才だったけど、ぼくは心の底から笑った。
「すごいなこれ! いままで観た漫才でいちばんおもしろいよ!」
大絶賛の気持ちをそのまま伝えた。するとあっちゃんは照れもあるのか、憮然とした表情で、
「……、いや。ていうかそもそもおまえ、お笑いなんてほとんど知らないじゃん」
と、ずいぶん素っ気ない態度だった。
たしかにぼくはお笑いについての知識はほぼゼロだった。流行りのバラエティ番組くらいは観ていたけれど、漫才やコントのようないわゆる「ネタ」をちゃんと観たことはほとんどなかった。お笑いライブに行った経験も皆無。そんなやつに、
「いままで観たなかでいちばんおもしろい!」
と言われても反応に困るのは当然だ。
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