オリラジ藤森が今語る「あっちゃん」との出会い 意気投合した「バイト先のスター」と「チャラ男」
ある日の休憩時間のこと。喫煙所にいたら、あの「笑い声の中心のひと」がやって来た。そうしてごく気軽な態度で話しかけてきてくれた。話題は、ぼくが着ている服についてだった。
「なんかそれいいね。どこで買うの?」
聞けば以前から、仕事場でいちばんチャラい格好をしていたぼくに目をつけていたらしい。彼の話しっぷりは、間近で聞いてもやっぱりおもしろかった。一方的に話すわけじゃない。まずはひとの話にしっかり耳を傾けて聞き役となる。そのうえで豊富な知識や経験から、
「この相手なら、どんな話題が喜ばれるか」
を瞬時に、かつ的確に探し出してくるような話し方。アタマの回転が抜群に速いからできる業なんだろう。いままで出会ったことのないタイプの人物で、とにかく新鮮だ。
ぼくがつるんできたのは、大学でもそれ以前でも、自分と似たようなやつばかりだった。
「中身? 意味? そんなのなくたって別にいいよ。ノリがよければ、それで上等っしょ!」というような。格好だけじゃない。ぼくも仲間も、とことん本当にチャラチャラしていた。
彼はそんなぼくらと明らかに雰囲気が違う。
「おれ、中田。中田敦彦」
「藤森っていいます」
そう名乗り合ってから距離がぐっと縮まるまで、時間はほとんどかからなかった。その日のバイト明けにはあっちゃんをバイクのリアシートに乗せ、彼の下宿先へ遊びに行ってしまったくらいだ。
以来、ぼくはあっちゃんの部屋に入り浸るようになった。バイト明けに一緒に帰ってゲームをしたり、ひたすらダベっていたり。
あっちゃんとは妙に波長が合って気楽でいられたし、互いにないものを持っていて補い合えるのもよかったみたい。なにをするというのじゃなくても、ふたりで時間を過ごしていれば楽しいし、満足だった。
あっちゃんのスゴいところ
あっちゃんには、スゴいところがたくさんあった。アタマが異様にキレるところ。考えがグルングルンとよく回るところ。思想を持っているというか、なにをするにもいつも筋が一本通っているところ。一緒にいると、感心することばかりだった。
あっちゃんはあっちゃんで、ぼくの素直さや明るさをいいと思ってくれていたみたいだ。ただの天然っぽい田舎者だっただけなんだけど。なんにしてもひとは、自分が持っていないものを持っているひとに惹かれるものなんだろう。
のちにあっちゃんはぼくのことを、
「出会ったころから慎吾には華があった」
などと評してくれたことがあった。そんなふうに思ってくれているなんて気づきもしなかったけれど、彼にそう言ってもらえるのは素直にうれしい。
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