百貨店の「バレンタイン商戦」コロナに克つ秘策 オンライン販売活用しリアル店の催事も慎重に

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ほかにも、来日できない海外の有名ショコラティエとファンをつなぐライブ配信をはじめ、デジタルデバイスやアプリを利用した新サービスに、各社がチャレンジする。オンライン上のコンテンツは、ネットショップとのアクセスがよい。購買方法やコミュニケーション方法の進化が加速し、新しい時代のバレンタインが垣間見える。

ただ、オンラインは便利とはいえ、やはり会場ならではのよさはある。会場に足を運べば、一度にざっと数百商品を見渡せ、短時間であらゆるチョコレートを俯瞰しつつ好みのものを探せる。友達と話しあったり、接客してくれる人がいたりする楽しさもリアル店の強みだ。「パッケージを手に取ってみたい」「オンラインは長く画面を集中して見るので目が疲れる」という声もある。

高島屋は「ニューノーマルショコラ」を打ち出し、非接触ニーズやリモートで盛り上がるショコラを提案(筆者撮影)

コロナ禍ならではのチョコ

商品に目を向けると、コロナ禍を意識したチョコレートがユニークだ。松屋銀座は「おうちで楽しむバレンタイン DIYチョコ」と銘打ち、カカオ豆からチョコレートを作れるキットや、ブラウニー作りキットを販売。高島屋は、在宅勤務による運動不足や「コロナ太り」を気にする人へと、糖質やカロリーを抑えたチョコレートケーキなどを充実させた。

2021年も例年同様に、新作や限定チョコレートがそろう。心が明るくなるデザインやカラーの「ズーム映え」チョコの提案も(筆者撮影)

今年は、来場客、関係者、販売スタッフ、従業員など関わる人全員の健康と安全確保のために、主催側があらゆる対策をとって、バレンタイン催事が行われる。

画像をクリックすると、長期戦の様相を呈してきたコロナ禍の今を追う記事一覧にジャンプします

仮に今年、バレンタイン催事が中止となったらどんな問題が起きただろう。「チョコレートを廃棄せざるをえなくなったかもしれない」(松屋銀座)、「オンライン販売はあるとはいえ、実店舗と同じ効果は期待できない。私たちも取引先も在庫を抱え、大きなダメージになります。普段流通する量と比較にならないくらい、バレンタインにはチョコレートが日本にきますから」(高島屋)。

バレンタインは人と人とのつながりを深め、1年に一度、とびきりおいしい「自分チョコ」に出会うシーズン。日本ならではのスタイルだ。2021年はそれぞれの立場で感染予防をしながら、多くの人が自分好みの、新しいバレンタインの楽しみ方を見つける年になるだろう。

市川 歩美 チョコレートジャーナリスト/ジャーナリスト

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いちかわ あゆみ / Ayumi Ichikawa

大学卒業後、民間放送局に入社、その後NHKで、長年ディレクターとして番組企画・制作に携わる。現在はチョコレートを主なテーマとするジャーナリストとして、日本国内、カカオ生産地などの各地を取材し、情報サイト、TV、ラジオなど多くのメディアで情報発信をしている。チョコレートの魅力を広く伝えるコーディネーターとしても活動。商品の監修や開発にもかかわる。

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