「呪怨」をつくった清水崇の粘り強く快活な人生

群馬生まれの少年が描いた妄想が世界に届いた

ホラー映画監督として知られる清水崇さん。子どもの頃の“怖い妄想”が作品にも生かされていると言います。この体験がどのように映画監督を目指すきっかけとなったのでしょうか?(筆者撮影) 
これまでにないジャンルに根を張って、長年自営で生活している人や組織を経営している人がいる。「会社員ではない」彼ら彼女らはどのように生計を立てているのか。自分で敷いたレールの上にあるマネタイズ方法が知りたい。特殊分野で自営を続けるライター・村田らむが神髄を紡ぐ連載の第89回。

『呪怨』の監督が最初に見た意外な映画

清水崇さん(48歳)はホラー映画の監督としてよく知られている。

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とくに代表作『呪怨』のインパクトは強い。見ていると、ジワジワと身体に毒が染みてくるようなじっとりとした怖さが特徴だ。

2003年の『呪怨 劇場版』で日本を恐怖に落とし込んだが、勢いはそこでは終わらず、2004年にはアメリカで『THE JUON/呪怨』としてリメイクされ、清水さん自身が監督を務めた。

その後、さまざまな作品を世に送り出してきたが、2020年に公開された『犬鳴村』は、コロナ禍という特殊な環境の中、大ヒットをした。

『樹海村』より(写真:東映)

そして早くも今年2月5日には【恐怖の村】シリーズ第2弾『樹海村』が公開される予定だ。

清水さんが、日本を代表する映画監督になるまでの軌跡を、東映本社の会議室で聞いた。

清水監督は群馬県で生まれた。

群馬県の中では比較的都市部だったが、それでも北には赤城山があり、周辺には田んぼや畑が多かった。

「子どもの頃は勉強はそこそこできるほうで、毎年学級委員をやってましたね。小学校のときはラグビーチームに入っていて、友達と自転車でレースしたり、カエルやムシを捕まえたり、活発な子どもでした。

逆に1人のときは、放っといてもいつも何か作っているような子どもでした。絵を描いたり、工作したり、小説を書いたりしてました」

そんな清水さんだったが、とても神経質な一面もあったという。

「怖い絵本とか、小説とか、当時はよくあったオカルト番組とか興味があって見ちゃうんですけど、決まって夜眠れなくなっちゃうんですよね」

例えばエドガー・アラン・ポーの小説を読むと、夜中にとても目が冴えた。

外の樹々がざわめいていること、家の階段の上り口のこちらからは見えない場所、押入れの中、そんな日常のなにげない場面に妄想を膨らませ恐怖を感じていた。

「怖くなって布団の中に潜るんだけど、でも幽霊って壁とかもすり抜けてくるのでは……と。布団の中にも当然入ってこれるよな……とか自分を追い詰めるような想像をしてますます怖くなりました」

布団の中に幽霊が入ってくるシーンは、『呪怨 劇場版』に登場し、屈指の恐怖場面になっている。トラウマになっている人も多いのではないだろうか?

「子どもの頃に想像した“怖い妄想”は、呪怨にほぼ全部そのまま生かされてますね」

そんな繊細な面を持つ清水さんだが、映画監督を意識するきっかけになった作品はホラー映画ではなかったという。

「子どもの頃はホラー映画は怖すぎて見れなかったですね。テレビで当時流行ったSFX(特殊撮影)の特集を見てたら、顔にナタがドン!!って刺さるシーンが急に流れて『なんてものを見せるんだ!! やっぱりホラー映画見るのはやめよう!!』って思いました(笑)。今思えば、あれはホラーの名作『ゾンビ』の1シーンだったと思います」

映画『E.T.』が流行ったときも最初は引き気味だった。少年漫画誌に乗ったE.T.の姿を友達に見せられて、

「こんな気持ちの悪い宇宙人、誰がわざわざ見に行くんだ? なんではやってるの?」

と思っていた。

そんな折り、普段清水さんに怖い話をしてくれる、親戚のおばさんから、

「『E.T.』見に行かない?」

と誘われた。内心、怖かった清水さんだが、

「はやってるんだってね」

と強がった。するとおばさんは、

「じゃあ行こう!!」

と清水さんは映画館に連れて行かれた。

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