1つ目の原因は、「リーダーに必要なのは『話す力』より『実行力・決断力』」という思い込みです。
これまで1000人を超える政官財のリーダーにお会いしてきましたが、びっくりするほど数多くの人が、実は「コミュ障」です。
つまらない話を延々と聞かせる「俺の話を聞け~」タイプや、黙って何の指示も助言もない「俺の背中を見ろ~」タイプなど、さまざまですが、「言えば伝わる」「言わなくても伝わる」と思っている人が実に多い。
しかし、いかに実行力や決断力があっても、その政策、覚悟、思いを伝える力がなければ、人は動きません。
前例を踏襲すればよかった時代には、内輪の折衝力さえあれば、あとは上意下達で物事が自動的に伝わっていたかもしれません。しかし、価値観も、情報伝達手段も多様化する今、どのリーダーにとっても、戦略的な「伝える力」は必要不可欠です。
これは「日本のモノづくり」にも似ています。いいものを作っても、そのよさが伝えられない。そうやって損をしているのです。
「政策を作る・実行する」「政策を伝えて、人を動かす」。これらは車の両輪であり、どちらか一方があればいいわけでも、トレードオフの関係性のものでもない。どちらが欠けてもダメなのです。
話し方は「学ぶ場+正しい知識」で上達できる
よく言われるのが、「話す力は才能だから、仕方ない」という考え方です。しかし、コミュ力の9割は「先天的」なものではなく「後天的」です。学ぶ場と正しい知識さえあれば、誰でも必ず上達できるもの。だからこそ、欧米でエリートは、話し方を幼少期から徹底的に学ぶのです。
インド独立の父、マハトマ・ガンジーは伝記でまるまる1章分を自らの人見知りについて費やすほど、内向的でした。イギリスの名相ウィンストン・チャーチルは29歳で議会の席に立ったとき、緊張のあまり3分間しゃべれませんでした。スティーブ・ジョブズでさえ、30代前半まで、決して上手なスピーカーとは言えませんでした。アメリカの大金持ち、ウォーレン・バフェットは、20歳まで「人前で話すことを考えただけで吐きそうになる」ぐらいでしたが、のちに話し方の学校に通い、その恐怖心を克服しました。
「生まれつきの話し方の天才」など、そうそういません。話し方はいつからでも、その意志があれば、上達させることができるものなのです。
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