成功者に「嫉妬の炎」を燃やし続けよ 「身の程知らずな欲望」が人生にコクを添える

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もう言うことはないので、ここで終わりにしてもいいのですけれど、一言付け加えると、世間には「身の程知らずな欲望」さえ持っていない、持てない人が多くいるのです。身の程を知りすぎて、初めからあきらめ果て、いやあきらめることさえ忘れ、誰をも嫉妬せず、嫉妬する気力さえなく、ただ自分の殻に閉じこもって生きているだけの人、死ぬのを待っているだけの人がいるのです。

あるいは、この反対に、小学校以来のすべての知的競争において負けてきたにもかかわらず、「身の程知らず」とはさらさら思わずに、真剣に自分は東大に受かるはずだとか、大学教授になるはずだとか、司法試験に合格して弁護士になるはずだ、と思い込んでいる(そして何もしない)人も少なからずいるのです。

自分の欲望が「あなた」を作る

こうした人々に比べれば、あなたははるかに幸福で健全です。確かに「身の程知らず」ではありますが、嫉妬し、苦しみ、傷ついているのですから、謙虚でつつましい欲望とさえ言えましょう。だから、あなたはその「自分の欲望」を捨ててはならない。それが「あなた」だからです。それをとったら「あなた」ではなくなるからです。他人にはどんなにくだらなく見える欲望でも、それが本当に体の底から湧き上がり、かつ長きにわたってあなたを突き動かす要望であるなら、それを捨ててはなりません。それをごまかしてはなりません。そこにはある「真実」が隠されているでしょう。しかも、あなただけの……。

今回の参考文献としては、『非社交的社交性』(講談社現代新書)を挙げておきます。

中島 義道 哲学者

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なかじま よしみち / Yoshimichi Nakajima

電気通信大学元教授・哲学塾カント主宰
1946年福岡県生まれ。77年東京大学大学院人文科学研究科哲学専攻修士課程修了。83年ウィーン大学基礎総合学部哲学科修了、哲学博士。専門は時間論、自我論。2009年電気通信大学電気通信学部人間コミュニケーション学科教授を退官。現在は「哲学塾 カント」を主宰し、延べ650人が参加した。著書は『働くことがイヤな人のための本』『私の嫌いな10の人びと』『人生に生きる価値はない』(以上、新潮文庫)など約60冊を数える。

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