部下が無能、と嘆く上司が知らない「8割の法則」 上司は「優秀でない社員」に目を向けるべきだ

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このストーリーの主役・糸数和彩さんは、世の多くのリーダーたちと同じく、なかなか成果を上げられないチームメンバーについて頭を悩ませていました。

和彩さんが勤めているのは、全国各地で店舗を展開し、数年前には海外進出も果たしたカジュアル衣料品店「ナチュレル」。エリアマネジャーとしての実績が評価され、3カ月ほど前から、本社・マーチャンダイジング部門の課長職に就いています。

同じリーダーでも、例えばプロスポーツのチームのリーダーであれば、試合相手によってスターティングメンバーを組み替えたり、不調のメンバーをイキのいい若手と交代させたり、といったことができます。

一方、人件費削減でリストラがすすみ、人員に余裕などない一般企業のリーダーにとって、そんなチームづくりは夢のまた夢。しかも日本の少子化は歯止めが利かない状況ですから、優秀な人材の確保が今後ますます難しくなることは明らかです。

では、リーダーたちはどうすればいいのでしょう? まずは「今のチームがすべて」と覚悟を決めることです。そのうえで、現在のメンバーで業績を上げるための方法を見つけ、実践していくしかありません。

メンバーの「8割」の底上げを

このようにチーム力を考えるとき、ひとつの指針になるのが「2:6:2の法則」です。どんな組織でも、優秀な2割と平凡な6割と“問題がある2割”が存在するという考え方で、「2割8割の法則」「ニハチの法則」などと呼ばれることもあります。

仕事の結果だけに着目する成果主義の場合、リーダーからつねに注目され、成果を上げるたびに賞賛されるのは、上位2割の優秀な社員ばかり。残り8割の社員たちは、努力がなかなか実を結ばず、高い評価を得るチャンスもほとんどありません。

もし本気でチームの総力を高めたいのであれば、リーダーが注力すべきなのは上位2割ではなく、残りの8割(平凡な6割+問題がある2割)です。これは学校の成績に当てはめればよくわかります。テストでいつも90点前後をとっている上位2割の生徒全員に100点をとらせるより、平均50点程度しかとれていない8割の生徒の点数をそれぞれ10点引き上げるほうが、クラスの総得点数ははるかに高くなります。

この8割の“ごく普通の社員”を伸ばすのに極めて有効なのが、「教える技術」のベースである「行動科学マネジメント」です。仕事の結果ではなく「行動」に注目し、そこに働きかけることで、それぞれの社員の業績アップや成長をかなえます。

「8割の社員の底上げをし、チーム全体の業績を上げる」。チーム力に悩むリーダーは、ぜひこのことを胸に刻み、これからの部下マネジメントを行ってください。

石田 淳 社団法人行動科学マネジメント研究所所長

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いしだ じゅん / Jun Ishida

株式会社ウィルPMインターナショナル代表取締役社長兼最高責任者
社団法人行動科学マネジメント研究所所長。(株)ウィルPMインターナショナル代表取締役社長兼最高責任者。アメリカ行動分析学会(ABAI)会員。日本行動分析学会会員。日本の行動科学(分析)マネジメントの第一人者。

アメリカのビジネス界で絶大な成果を上げる人間の行動を科学的に分析する行動分析学、行動心理学を学び、帰国後、日本人に適したものに独自の手法でアレンジし「行動科学マネジメント」として展開させる。

精神論とは一切関係なく、行動に焦点をあてた科学的で実用的なマネジメント手法は、短期間で8割の「できない人」を「できる人」に変えると企業経営者や現場のリーダー層から絶大な支持を集める。現在は、日本全国の人材育成、組織活性化に悩む企業のコンサルティングをはじめ、セミナーや社内研修なども行い、ビジネスだけでなく教育、スポーツの現場でも活躍している。日経BP「課長塾」の講師でもある。

主な著書に累計部数40万部のベストセラーとなった『教える技術』『〈チーム編〉教える技術』『マンガでよくわかる 教える技術』『マンガでよくわかる 教える技術2<チームリーダー編>』、大判の『〈図解〉教える技術』(すべて小社)ほか多数ある。趣味はマラソンとトライアスロン。

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temoko 作画
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