解約できない!マンション「サブリース」の罠 「サブリース新法」施行後も残された課題とは

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国土交通省、消費者庁、金融庁は連名でサブリースに警鐘を鳴らす(記者撮影)

トラブルが後を絶たなかった「サブリース」にメスが入った。国土交通省は2020年12月、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」のうち、サブリースに関連する規制を先行して施行した(通称:サブリース新法)。サブリースに関する不当な勧誘や誇大広告の禁止、契約前の賃料減額などのリスク説明を義務づけた。

マンションやアパートなどに投資する場合、ほとんどのオーナーは購入後の管理を業者に任せている。1つは入居者からの家賃徴収を一任する「集金代行」だ。清掃・修繕の手配や入居者からのクレーム処理など付帯サービスが付く場合も多い。

もう1つが渦中の「サブリース」だ。業者がオーナーから部屋を借り上げ(マスターリース)、別の入居者に転貸する(サブリース)。万が一転貸先の入居者が決まらなくとも、業者が毎月家賃を支払うためオーナーの収入は安定する。

トラブルの多いサブリース

サブリースをめぐっては、業者とオーナーとの間でトラブルが相次いでいた。

「家賃を2000円ほど下げます」。都内に住む男性は5年前、業者から送られてきた手紙の内容を見て困惑した。

男性は東京・渋谷区内にマンション1戸を保有している。手紙の差出人は、男性のマンションを借り上げて別の入居者に転貸する「サブリース」を請け負っていた業者だった。いわく、周辺相場の下落を理由に、男性に支払う家賃を月約9万5000円から9万3000円へと引き下げるという。

「相場は本当に下がっているのか?」。周辺の似たようなマンションの募集家賃を調べても、自分より高い金額で貸している部屋はたくさんある。不審に思った男性は、業者とのサブリース契約の解約を申し出た。業者は抵抗したものの、契約書の不備を指摘し解約をもぎ取った。

一般的なサブリース手数料は家賃の1割が相場だが、業者は男性から月9万5000円で借り上げたのち、入居者に11万5000円で転貸していたことが判明した。家賃減額の根拠としていた周辺相場の下落についても、「業者は割安な部屋を意図的に抽出していただけで、そのような事実はなかった」と男性は憤る。

この男性のように、空室時にも業者が家賃を支払うと謳ったにもかかわらず、保証したはずの家賃を一方的に減額されたり、家賃そのものが支払われなかったりするトラブルが後を絶たない。全国の消費生活センターに寄せられたサブリースに関する相談件数は、年間450件を超えている。サブリース新法の制定にはこうした背景がある。

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