フランス人「ワクチン嫌い」が一気に変わった訳 他国に比べて接種ペースが著しく遅いが…

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フランスは他国同様、医療従事者や基礎疾患のある人、高齢者など国民をグループ分けし、段階的にワクチンを接種していく計画です。1月18日以降は75歳以上の国民は正式に接種を受けられるようになり、3月初めには65歳から74歳まで、春以降には50歳から64歳までの人が受けられるようにする、というのがマクロン政権の計画です。

もっとも、現場はかなり混乱しているようです。接種の予約はネットあるいは、専用の電話番号経由でできるようになっています。私の父も2月3日と3月2日と2回、それぞれパリで接種する予約を取ることに成功しましたが、この日受ける段階で接種センターに十分なワクチンがあるかどうかは現時点ではよくわかりません。

国民のワクチンに対する抵抗感を払拭するために、他国では国のトップがテレビカメラの前で公にワクチンを接種する場面もありますが、フランスではこうしたことも行われませんでした。

勝者はドイツ、アメリカ、イギリス?

では、いま市場に出ているさまざまなワクチンについて、再び考察してみましょう。現時点ではワクチン開発と生産における勝者はファイザー・バイオNテック連合(トルコ系ドイツ人夫妻が開発に成功)を擁するドイツと、モデルナのあるアメリカ、そして次にアストラゼネカのあるイギリスでしょうか。

ヨーロッパではすべてのワクチンは欧州医薬品庁(EMA)によって承認されなければなりません(EMAは現在、イギリスのアストラゼネカ製ワクチンについて審査しています)。その後、ワクチンはヨーロッパ各国の医療当局によって承認される必要があります。

イギリスは、ブレグジット(EU離脱)のおかげでワクチン接種を他国に先駆けて始められました。上記のヨーロッパでの承認手続きの必要が一切なく、イギリス国内での承認で十分だったからです。

一方、EU加盟国はワクチン入手もEUを通じて行わなければなりません。EUは、加盟国の人口に合わせてワクチンを配布すべく、20億回分以上のワクチンを先行予約しています(そして、そのワクチンはすべての加盟国向けに同じ価格で販売されます)。

これまでのところ、欧州では2つのワクチンが承認されています。1つは、昨年12月21日に承認を受けたファイザー製の「mRNA」ワクチンです。このワクチンは90%または95%の有効性があるともいわれています。もう1つは今年1月6日に承認を受けたモデルナ製です。アストラゼネカとオックスフォード大学によるワクチン(臨床試験の第3段階)も、1月29日に承認される見込みです。

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