では、フランスはどうでしょうか。フランスはワクチンプログラムに遅れが生じているだけではなく、ワクチンの開発(と生産)競争でも後れを取っています。サノフィのような優良な大手製薬会社があることを考えれば、これは非常に信じがたいことです。
フランスがワクチン接種で遅れをとったのにはいくつか理由があります。1つは、多くのフランス人がワクチン接種に抵抗感を示していたことです。数週間前に行われた世論調査の「ワクチン接種を受けるつもりか」という質問に対して、フランス国民の47.4%が「はい」、52.6%が「いいえ」と答えていました。現在では、「いいえ」と答えた人の比率は43%に減っていますが、それでも、ドイツよりも12ポイント、イギリスよりも22ポイント高い数字です。
「はい」と答える比率は日々、高まっており、フランス国民の過半数を占めようとしていますが、フランス人はもともと「ノン(いいえ)」と答えるのが好きな国民であり、よく反対デモに参加しているのもご存じのとおりです。何か提案されたらとりあえず反対するのはフランス人の国民性ともいえます。
もう1つは、政府自体が慎重だったことが挙げられます。ワクチンを接種するには5日前までに事前診断を行い、同意書にサインをしなければならないのです。このため、接種が始まって1週間経ってもフランスでは516人しかワクチンを受けていないという状態でした(同じ期間にドイツでは20万人が受けています)。
クリスマスを境に意識が変わった
もっとも、国民の意識はクリスマスのホリデーシーズン後に変わりました。なぜでしょうか。フランスより先にワクチン接種が始まった国を見ると、深刻な副反応はほとんどなく、これまでのところ大きな問題は生じていません。また、イギリスで昨年末突然、新型コロナウイルスの変異種が発見され、ウイルスを制御することがますます難しくなると実感し始めています。
フランス国民も生活の制限にはいい加減辟易としており、できる限り早く日常を取り戻したいと思っています。ワクチンの集団接種は今のところ、この「最悪な現状」から脱するための唯一の方法、あるいは希望に見えるようになってきました。
フランス人が日増しにワクチン接種へ前向きになっている今、政府はこれに応えられる状況にあるのでしょうか。どうやらそうではないようです……。
欧州連合(EU)域内では、昨年12月27日からワクチン接種が始まり、フランスでは2021年1月12日までに24万7167人が接種を終えています。ところがこれは、ワクチン接種をいち早く始めたイギリス(約280万人)はおろか、イタリア(80万730人)にも遥かに及ばない水準です。
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