ただし、外資系コンサルティング会社は「勤め上げる」職場ではない。澤木さんは楽しく働きながらも「卒業後」を考え始めるようになった。
「きっかけは毎日読んでいた日経新聞の紙面でした。第二新卒の記者を募集していたんです。募集要項に1977年生まれまで、と書いてあって、『今年で最後のチャンスなんだ』と思いました」
といっても、新聞記者になりたいわけではない。子どもの頃から本を読むと安心したし、コンサルタントとしてプレゼンテーションのシートを練る技術にも磨きをかけた。見やすくわかりやすい誌面を作る仕事がしたい。新卒採用では入れなかった出版業界にチャレンジしてみたい。
まずは全体像を把握することが、澤木さんの鉄則である。転職専門会社に登録して情報を集めたところ、「有力メディアは自社ホームページなどで独自に募集をかけている。応募者が多いので転職会社はあまり使わない」と率直に教えられた。一方では、コンサルタントとしての実績をすぐに生かせる外資系事業会社のマーケティング部門の職を紹介された。
「ほかの可能性を紹介してもらってよかったと思います。マーケティングは確かに得意だけれど、まったくときめかないのです。本や雑誌の編集者になれないのであれば、転職する意味はないと気づきました」
念願の出版社に入って9年の歳月が経つ澤木さん。前職に比べて出版業界はどうかと問うと、厳しい答えが返ってきた。
歯を磨く暇すらなかったコンサル時代
「編集の仕事は初めてだったので、最初は戸惑いました。でも、時間を自由に使えるのは助かります。コンサル時代は徹夜して資料を作って翌朝8時に印刷して10時から客先でプレゼンすることなんて日常茶飯事でした。歯を磨く暇すらなかった。プロジェクト中はプライベートの予定も入れられません。いまでは家で原稿を書いたり、企画を考えることもよくありますが、仕事と生活の区別がないというか、楽しんでやっています」
同じく出版業界で働く者としては耳が痛い話だ。締め切りが重なったぐらいで忙しぶるのはもうやめよう……。
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