公認会計士と弁護士の両方の資格を持っている人に初めて会った。ともに合格者数の増加と就職難、仕事の奪い合いなどが報じられている業種であるが、最難関の国家資格であることには変わりない。両方持っていれば人生安泰なのだろうか。
インタビュー場所は、東京駅八重洲口近くにあるフォーシーズンズホテル丸の内の「エキバー&グリル」。入口前のラウンジで待っていると木村静香さん(仮名、36歳)が時間どおりに現れた。そこで軽くあいさつ。いきなり明るい笑顔をつくるような華やかさはないが、感じのよさは静かに伝わってくる。外見は女優のとよた真帆を10歳若くしたような和風美人である。
木村さんと僕は一橋大学の同級生であるが面識はない。共通の友人を通して紹介してもらったら、以下のような趣旨のメールが返ってきた。
「出産したばかりなので、今は、法律事務所には出社していません。独立事業者なので、育休制度があるわけではなく、共同受任の弁護士に案件をお任せしている状態です。産後1年間は子どもと過ごすつもりでいます。個人で受任している税理士業務などは自宅で引き続きやっています。現状はあまり仕事をしていないし、華のある話もできません。記事のタイトルが華やかなので、私の経歴でお役にたてるかわかりませんが、それでも取材テーマに沿うようであればご連絡ください。」
助言のプロフェッショナルらしい的確かつ控えめなメールである。ただし、仕事をあまりしていなくても焦燥感に駆られない境地に至る前には、15年ほどの悪戦苦闘が必要だったようだ。
一橋大学商学部を卒業してからは北陸地方にある実家に帰って、TACの通信講座で公認会計士の資格勉強する道を選んだ木村さん。会計士を目指したのは、出産や育児などでキャリアにブランクが生じやすい女性でも、強くアピールすることなく企業社会に実力を認めてもらいやすいと思ったからだ。
「商学部出身なので科目になじみがあって、しかも難しいとされている資格を探しました。どうしても公認会計士、という強い意志があったわけではありません。そんな気持ちだからすぐには合格できなかったのだと思います。私はたたかれないと走らない馬なので……」
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