会計士&弁護士、Wスーパーライセンス美女

妻が強いと夫は自由になる??

「このままではバリューが落ちる!」という焦燥感

実家に帰って1年ほどはアルバイトをしながらのんびり勉強していた。1日の平均勉強時間は3時間に満たない。それでも大丈夫だろうという妙な自信があったが、結果は当然のように不合格。学生時代の友人たちは社会人2年目として充実した生活を送っているように見える。いったい私は何をしているのか。木村さんは急に焦り始めた。

「このままでは自分のバリューがどんどん落ちてしまいます。一般企業に就職活動をする道もあったのですが、1回は資格勉強をやりきってみようと決めました。あのときは勉強をしていないと不安で食事がのどを通らないほどでしたね。半年ほどそんな状態でコツコツ勉強しました。年明けにようやく合格ラインに達するまでは、すごく苦しかったです」

基礎的な学力と知識を備えている人でも1年間は寝食を忘れて勉強しないと合格できない試験なのだ。ようやく合格した木村さんは国際税務を手がける税理士法人に就職する。外資系企業の顧客が多く、組織再編の際などに税務の面からアドバイスができることが魅力だった。

周知のように、公認会計士の試験に合格すれば税理士としても活動できる。大企業の財務諸表監査が仕事の大半を占める監査法人に比べ、税理士法人は企業の意思決定にかかわるコンサルティングの要素が強い。木村さんは後者を選んだ。

「国際税務は華やかそうな仕事でいいな、という気持ちもありました。当時は野心があったんですね。ロースクールですっかり燃え尽きてしまいましたけど……」

ロースクールでの苦労話を聞く前に、弁護士資格を取ることを勧めてくれた夫との出会いを聞きたい。税理士法人の同僚だったという。社内結婚である。

「きっかけは特にありません。税務申告書類を作る繁忙期には毎日のようにみんなで夜中まで働いているので、よく飲みに行ったりしていました。気がついたら付き合っていましたね」

木村さんは美人ではあるが「押し出しがいい」わけではない。合コンなどでは気持ちが引いてしてしまうタイプだろう。瞬発力で恋愛するのではなく、共通の目的がある職場で肩を並べて働くことで、時間をかけて惹かれ合うほうが向いていると感じる。実際に、結婚して子育て中の現在も夫との仲は良いようだ。

「私はしゃべることが得意じゃないのですが、彼はよくしゃべる。私が黙っていても勝手にしゃべっていてくれる(笑)。居心地がいいですね。生活の中でリードをしたい部分が違うのもよかったと思います。私は細かいことが気になるタイプで『モノを出しっぱなしにしないで』とよく言っています。でも、家を買うような大局的なことは決めきれない。下調べは私がするし、決めた後の段取りも私がやるけれど、決断は彼にしてほしいですね。会社を辞めてロースクールに入るときもそうでした」

企業活動で取引をするときは税務と同時に法務もかかわってくる。公認会計士、税理士、弁護士がそれぞれの専門知識と資格を生かして提案を行うことも少なくない。「全部の資格を持っていれば全部の提案ができるからいいんじゃない? ロースクールは(旧司法試験に比べて)合格率が高いらしいよ」と木村さんに勧めてくれたのは、同じく公認会計士の資格を持つ夫だった。同じ立場で働いていて、妻の実力を認めていなければ思いつかないアドバイスだ。

木村さんは5年間勤めた税理士法人を辞めて、早稲田大学のロースクールに入学する。2007年のことだった。3年間で合格レベルに達しなければならない。その間の生活は夫が支えてくれている。合格しないわけにはいかないのだ。

「学生時代に法律を学んだわけではないので、民法でいう『悪意』ってどういう意味? というレベルから始めました。なんでこんな勉強を始めちゃったんだろうと思うぐらい苦労しました。でも、始めたからには受かるまでやらなくちゃいけない。早稲田には二度と近づきたくないぐらいつらかったです」

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