受験勉強に「見返りの大きさ」というリアルな損得勘定を持ち込んで結果を出すあたりは、経済観念の発達した愛知県民らしいエピソードである。無事に東大に現役合格した澤木さんは文科三類から文学部に進学。学力とは関係なく演劇や哲学などに精通している周囲に刺激を受けた。ただし、本人は体育会に所属しており、大学生活のほとんどは部活の思い出で染まっている。学内で恋愛をすることもなかったようだ。
東大女子、合コンの”奥の手”は学歴詐称?
「東大でモテる女の子は、顔は可愛いけれどちょっとヤバい系なのです。具体的にはロングスカート姿でポシェットをしちゃうような人。田舎っぽい子がなぜかモテます」
澤木さんたちは学外に活路を探したが、合コンでは大学名を出すと男性陣が引いてしまいやすい。「アオタン(青山学院女子短期大学)です」と学歴詐称して合コンに臨んだ女友だちもいたという。本当のアオタン生に見つかったら殺されそうだな……。
就職活動は恋愛よりも大変だった。2000年卒の大卒求人倍率は0.99倍(リクルートワークス研究所)と史上最低であり、まさに超氷河期。出版社志望の澤木さんは苦戦を強いられた。第1志望だった出版社を最終試験で落ち、澤木さんが入ったのは外資系のコンサルティング会社。活況を呈していた通信業界の営業力強化のコンサルティング案件を中心に、5年半も勤めた。
「コンサルの仕事はとても面白かったです。プランを描くだけでなく、セミナーなどのイベントも一緒に実施するところまでかかわりました。周囲から『天職なんじゃないの?』と言ってもらえたほどです。あの5年半で仕事のやり方は身に付いたと思います」
新しい案件を手掛ける際は、いきなり作業を始めるのではなく、仕事の目的やゴールを意識しながら全体像を先に把握する。顧客に接するときは、「どうすれば気持ちよく動いてくれるか。巻き込んでいけるのか」を慎重に考える。つねに新しいアイデアを出し続ける――。確かに、どんな職業にも通用しそうな基礎力だ。
「給料は普通の大企業よりちょっといい程度でした。20代前半で年収1000万円なんて達しませんよ。プロジェクトが始まったら、朝9時から終電までが毎日続きます。プライベートはいっさいありません。でも、勉強にもなるし、やりがいもあるから平気でした。外資コンサル業界は冷たいと思われがちですが、私が勤務していた会社ではプロジェクトの最初と最後には必ず飲み会があって、仲もよかったですよ」
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