女性には免罪符がなく、手抜きを許さない時代--『くらべない幸せ』を書いた香山リカ氏(精神科医、立教大学現代心理学部教授)に聞く
女性に向けた「生き方本」が受けている。「比較のなかで、もがき苦しむのはちょっとやめてみませんか」とアドバイスする。現代はそれほどに生きにくい時代になっているのか。
--現代女性は時代に翻弄されている?
特に女性の場合、自分の人生に対してまじめに努力し頑張っていても、なかなか努力に見合っただけの手応えや満足感が得られないと悩む人が多い。
その悩みの大きな原因には、いま自分よりうまくいっていると思われる人、成果を出していると思える人と比べてしまって、その比較の中で自己嫌悪や自己否定に陥りがちなことがある。
女性も、男性と同じように社会の中で実力を発揮して頑張っていく生き方が定着した。その一方で少子化も問題になっている。
ワーク・ライフ・バランスという名の下に、逆に女性が仕事も結婚も子育ても、さらには美貌やライフスタイル、そういうものも含めて手抜きを許されないというような、何か免罪符がない時代を迎えた。
--免罪符がない……。
女性は、たとえばある政治家のようにすばらしい経歴を持ち活躍していても、ファッションセンスがない、態度がおかしい、と厳しい評価を受ける。あれほどの人なのだから少々のことは許していいのに。女性に対する世間の目のハードルは高い。
男性の場合は一つの価値、つまり自分はここが得意、あるいはここに秀でているということに、逃げ込むことができる。その価値だけで評価してもらえる。
ところが、女性は全方位的にすべてに優れていないと認められないところがある。