女性には免罪符がなく、手抜きを許さない時代--『くらべない幸せ』を書いた香山リカ氏(精神科医、立教大学現代心理学部教授)に聞く
--この本に勝間和代さんの「完璧な幸せ」メソッドの話があります。
勝間さんはすばらしい方だが、誰もがあの人のように生きられるわけはない。あこがれるのはいいが、自分を否定する根拠として飛びぬけた方と比べるのはお勧めできない。
そういう人は何人もいないからこそスターなんだと割り切ることだ。
--時代や社会の要請が変わり、適応障害の人が増えている?
いえいえ、女性の質が劣化しているということではない。女性をめぐる社会のとらえ方や価値観が、大ざっぱにいえば5年単位で激変しすぎているということではないか。
そこでは、まじめな女性であればあるほど提示された価値観に沿おうとする。ところが、その価値観はめまぐるしく変動して、自分の価値が上がったり下がったりすることになる。
あるときは結婚せず仕事を頑張るキャリア女性の価値が高かったのが、いきなり結婚していない人は負け犬だと言われて価値ががた減りになったり。自分という存在は変わらずに、自分をめぐる評価の軸が大きくぶれていく。
価値観が変わることで、これまでのやり方が間違っていたと激しく否定されると、それでやってきた人たちは立つ瀬がない。混乱してしまうのは仕方がない。
--そこで、「自分の証」を求めようと、婚活もブームのようです。
結婚しないほうがいいとは思わないが、女性は社会で生きていくうえで、結婚についてさんざん頭を悩ませてきたはず。いままで結婚を選択せず、子どもを持つことをあきらめてしまった人たちもいた中で、安易に結婚はすばらしい、子どもをたくさん産んだほうがいいと、素朴に答えを出すことはできない。