ニッケル高騰を招いた「鉱石のサウジ」の禁輸 ステンレス原料のサプライチェーンがマヒ

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そして、そのニッケル銑鉄は原料の6割をインドネシアに頼っている。今回の禁輸はインドネシアの鉱石→中国のニッケル銑鉄という、ニッケルの一大サプライチェーンを断ち切ってしまったのだ。

大統領選後も禁輸継続

もちろん、中国は手をこまぬいていたわけではない。鉱業法施行前に鉱石をかき集めた。積み上げた港湾在庫は1400万~2400万トン。それでも早ければ6月、遅くとも今秋には在庫が底を突く。

当初、「外貨収入が減って困るのはインドネシア。そのうち禁輸は緩和される」という楽観論が大勢だった。が、インドネシアの鉱石輸出はGDPのわずか0.1%。7月の大統領選の候補者も2人とも鉱業法堅持を唱えている。

もっとも、足元のニッケル市況は1.9万ドル前後で弱含んでいる。ファンドの利食いや鉱山会社のヘッジ売りが入ったためだが、「これで相場が崩れる」と見る専門家はいない。インドネシアに代わる産地として業者が殺到したフィリピンでは、鉱石価格が5倍にハネているのだから。

住友金属鉱山のタガニートは年末にフル操業になる。その時、市況はどうなっているか。ある米国の銀行は「3万ドルもありうる」と予測。「サウジが禁輸すれば、原油は200ドルを突破する。インドネシアは“鉱石のサウジ”だ」。

双日・合金鉄部の大倉努・担当部長は「年末2.2万ドル」と比較的マイルドだ。この水準であれば、閉鎖鉱山や赤字鉱山が動き出し需給が緩む、と読む。「2007年の5万ドルを含め、3万ドルを超えたのは歴史上、数カ月しかない」。

高値圏で推移すれば、400系ステンレス(クロム主体でほとんどニッケルを含まない)へのシフトなどニッケル離れに拍車をかけかねない。「適正な水準に戻るのはいいが、法外な値段はいかがなものか」(住友金属鉱山の肥後亨ニッケル営業・原料部長)。製錬会社の本音である。

「週刊東洋経済」2014年6月14日号<6月9日発売>掲載の「価格を読む」を転載)

梅沢 正邦 経済ジャーナリスト

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うめざわ まさくに / Masakuni Umezawa

1949年生まれ。1971年東京大学経済学部卒業。東洋経済新報社に入社し、編集局記者として流通業、プラント・造船・航空機、通信・エレクトロニクス、商社などを担当。『金融ビジネス』編集長、『週刊東洋経済』副編集長を経て、2001年論説委員長。2009年退社し現在に至る。著書に『カリスマたちは上機嫌――日本を変える13人の起業家』(東洋経済新報社、2001年)、『失敗するから人生だ。』(東洋経済新報社、2013年)。

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