『ハート・ロッカー』--次の経済成長エンジンは中東か 《宿輪純一のシネマ経済学》

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 また、最近は、経済成長を考える一つのよりどころとして、人口増加率を重視する傾向がある。いまや中東地域は出生率と出稼ぎ移民のため世界最高レベルである。そのため、成長可能性が非常に高い。

確かに、中東はその名のとおり、地理的にアジアと欧州の真ん中にある。中東の人々は、シンドバッドの時代から商業が強かった。そういったベースもあり、輸送ハブとしての機能も強い。ドバイ港はロッテルダムを抜いて世界トップクラスである。日本の港湾は20位にも及ばないとの話がある。

しかも、最近では、原油枯渇後を展望してか、太陽光など再生可能エネルギーの対応にも注力している。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の本部も中東である。つまり、“環境”問題にはいち早く国家プロジェクトとして対応している。

さらに、中東の中における大国である、イランやイラクも政治的な課題は残しながらも、経済成長ステージに入ってきたとの見方もできる。

イスラム教のエリアであるものの、アジアやインドの次は中東が近い将来、経済成長の面でも中心になる可能性はある。

中東に対し、今後、親しみを持って接した方がよさそうだ。

『ハート・ロッカー』 2010年3月6日(土) TOHOシネマズみゆき座、TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー 配給:ブロードメディア・スタジオ (C)2008 HURT LOCKER, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.


しゅくわ・じゅんいち
映画評論家・エコノミスト・早大非常勤講師。1987年慶大卒、富士銀行入行。98年UFJ(三和)銀移籍。非常勤講師として、東大大学院、(中国)清華大、早大等で教鞭を執る。ボランティア公開講義「宿輪ゼミ」代表。財務省・経産省・外務省等研究会委員。映画評論家として『ローマの休日とユーロの謎』(東洋経済新報社)、他著書多数。公式サイト:http://www.shukuwa.jp/、Twitter:JUNICHISHUKUWA

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