東京ヴェルディを子会社化した「ゼビオ」の深謀 名門サッカーチームに何が起きていたのか
東洋経済は、今回の東京ヴェルディ出資についてゼビオHDが日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)に説明した文書を入手した。それによると、羽生氏が「元凶」と批判した新株予約権のスキームには、経営陣の自由度を確保する目的とともに、私的な支配欲と資金力でクラブを買収する行為を阻止する狙いがあったとしている。
関係者への取材を総合すると、これまでゼビオHDは東京ヴェルディに対して、金銭的・人的支援を行っていた。また新株予約権の行使額の大半が1円だったため、少ない金額で株を取得したと指摘されるが、2010年当時に一定額を払い込んでいるという。ゼビオHDが支配権を握らないようにするため、予約権の対価を1円分だけ残した。その結果、今回大半の行使額が1円となっただけだという。
「赤字補填を目的とした若手選手の売却」
スクール事業買収の提案があったことは事実のようだ。ただ、Jリーグに提出した文書には、これまでの経営実態に対して、「赤字補填を目的とした若手選手の売却」という強い非難の言葉が入っている。
どういうことか。関係者によると、羽生氏を始めとした経営陣はJ1昇格を狙って、大物選手の獲得に力を入れてきた。その資金は、有望なユース選手を放出することで得る移籍金で賄ってきたという。スクール事業の買収提案は、資金援助の1つの手段にすぎない。むしろ短期的な成果ばかりを求め、自前の選手育成を怠ってきたのは、これまでの経営陣というわけだ。
羽生氏らが検討した新株発行による増資案では、引き受けの申し出は複数からあったようだ。ただ、ゼビオHD側は、「無計画で場当たり的な増資だ」と考えた。しかも増資案は、株数が20倍以上に増え、既存株主の保有する権利が大幅に毀損する内容だった。
そこでゼビオHDが最終手段として繰り出したのが、新株予約権の行使だった。この結果、ゼビオHDは東京ヴェルディ株の56%を保有。もともと筆頭株主だったデザイン家電メーカーのアマダナや、大株主でスマートフォン向けゲームを展開するアカツキの株式保有は約1割に低下した。