石田ゆり子が「逃げ恥」抜きでも魅力あふれる訳 強さを押し出さずともほんとうの自由を感じる
呪いをはねのける力のありそうな石田さん。石田ゆり子さんが実際どんなひとか知る由もないが、深窓のご令嬢のように見えて、水泳が得意な、健やかなひとであるようだ。
いまは『逃げ恥』の百合ちゃんのイメージが強い石田さんだが、2020年後半、彼女は2本の映画に連続で出演した。雫井脩介のベストセラーが原作の『望み』(堤幸彦監督)と、秦建日子の小説が原作の『サイレント・トーキョー』(波多野貴文監督)の2作で、前者は行方不明になった息子が殺人事件の容疑者かもしれないとなったとき、犯人であろうとそうでなかろうと息子には生きていてほしいと強く願う母親役。後者は、爆破テロに巻き込まれた主婦と思いきや実は……というトリッキーな役。どちらも百合ちゃんとは違うヘヴィな役柄だ。
思い込んだら真っすぐ揺らがない強さ
石田さんは映画だと過去にも、天童荒太の直木賞受賞作の映画化『悼む人』(堤幸彦監督 2015年)では宗教家にとことん尽くし抜き、彼のとんでもない願いを叶えようとする役を演じていたし、芥川賞作家・平野啓一郎の小説が原作『マチネの終わりに』(西谷弘監督 2019年)は、恋愛ものながら、石田さんの演じた役はパリで活躍するジャーナリストで、爆弾事件に巻き込まれたことからPTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされるようになるという設定で、これまたヘヴィ。
これら、まったく違う役柄ながら、ひとつ共通している点がある。思い込んだら真っすぐ揺らがない強さを発揮することだ。『望み』や『サイレント〜』のスタッフに聞くと一様に、石田さんが演じることで、役ががむしゃらすぎず、親しみやすさが生まれるというようなことを(大意)言うのだ。かつてはがむしゃらな演技が演技派として評価されていたときもあるが、いまはそうではない。どんなに自分を貫くにしても、むき出しの激しい表現よりも、他者を傷つけないような配慮する身振りが好まれる時代に、石田さんの表現はフィットする。
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