石田ゆり子が「逃げ恥」抜きでも魅力あふれる訳 強さを押し出さずともほんとうの自由を感じる

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とはいえ、いま、ここまで石田ゆり子さんが支持されるのはなぜなのか。高校生のときにスカウトされて芸能界入り、女優デビューから32年。ベテラン俳優といって過言でない石田ゆり子さんの魅力が改めて注目されたのは、ドラマ『逃げ恥(逃げるは恥だが役に立つ)』(2016年 TBS系)で演じた役の影響は大きかったであろう。契約結婚からはじまった主人公みくり(新垣結衣)とそのパートナー・平匡(星野源)を懐深く見守る、みくりの叔母・百合ちゃんは多くの視聴者に支持された。

百合ちゃんは仕事に情熱を注ぐあまり、アラフィフになっても独身。仕事でしっかり成功しているので、経済的にも困らず、素敵な生活を送っていて、みくりには憧れのひと。そんな彼女が、17歳も年下の男性と恋愛関係になるのも『逃げ恥』の見どころのひとつだった。主に20、30代の視聴者はみくりに、40代以上は百合ちゃんに自分を投影できた。

百合ちゃんが放った「呪い」もたちうちできない

百合ちゃんのエピソードで白眉だったのは、連ドラ最終回、年の差恋愛を揶揄されたときに毅然と放つのセリフ「いまあなたが価値がないと切り捨てたものは、この先あなたが向かっていく未来でもあるのよ」や「私たちのまわりにはね、たくさんの呪いがあるの。(中略)自分に呪いをかけないで。そんな恐ろしい呪いからは、さっさと逃げてしまいなさい」は世代問わず、喝采をもって迎えられた。

「呪い」とは主に、女性はこうあるべきとか、こうあるべきでないとか、一般常識のようなことにとらわれてしまうこと。年齢や性別で規定されがちなことから自由になろうという機運は年々強くなっている。2011年に内田樹さんが『呪いの時代』という本で現代社会に潜む「呪い」を取り上げたころから、日常でも「呪い」という言葉を使うことが増えて、『逃げ恥』でも使用されたことで、さらにポピュラーな言葉になった。石田さんは、私たちがついとらわれてしまう「呪い」と程遠い、呪いに決してかからない、呪いがたちうちできない清らかさの象徴のようなイメージをまとっている。

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