箱根駅伝、歴史が変わる「最強の1年生」の衝撃 規格外の「ゴールデンエイジ」が起こす劇的変化

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出雲駅伝が中止となり、例年と違って記録会やハーフマラソンといった選手の力を推し量るレースが中止になったことで、各大学の戦力は、トラックのタイムや全日本大学駅伝や予選会といった少ない情報ソースしかありません。

このタイムだけで読み解けないのが「山の神」の存在。登り区間である5区はトラックでの絶対的なスピードは要求されません。

必要なのは「山適性」。努力や根性ではなく、適性がものを言う区間であるからです。

「2代目山の神」として知られる柏原竜二さん(東洋大)が「当時は信じてもらえないと思って黙っていたんですけどね」と前置きしたうえで話してくれたエピソードがあります。「箱根のコースを走っていると、どこに足をおけばいいか見えるんです。ぼくはそこに足を置いただけなんです。とくに4年生のときはコースに線が見えましたから」と。

これが「山の神」のレベル。1年生の中に柏原クラスの鮮烈な「山の神」デビューを果たす選手はいるのか? そこにも注目してみたいところです。

各大学はまるで「ダライ・ラマの後継者」を探すように、自校選手から「山の神」候補を見いだしたはずだからです。そして、そこには必ず「リザーブである選手」も存在する。登録メンバーの中から「山の神」候補をみつけていくのも、楽しみのひとつです。

「東京オリンピックの前哨戦」でもある

なぜ、今年の箱根駅伝は、ここまで「1年生」に注目すべきなのでしょうか。

西本 武司(にしもと たけし)/「EKIDEN News」主宰。『あまりに細かすぎる箱根駅伝ガイド!2021』監修。吉本興業、ほぼ日刊イトイ新聞を経て、一般社団法人OTT代表理事。「オトナのタイムトライアル」など新しいレースを企画する。走ること、見ることと多角的にマラソンレースを楽しむ。2017年ニューヨークシティマラソンにて(写真:EKIDEN News)

それはここまで書いてきたようにあふれんばかりのタレントを持ち合わせた「ゴールデンエイジ」世代であることはもちろんですが、今年の箱根駅伝には、また「違った側面」もあるからです。

延期となっている東京オリンピックが開催されれば、今回の箱根駅伝を走った選手たちの一部は、このまま東京オリンピック代表選考レースとなる日本選手権まで、成長曲線を描いていくことでしょう。うまくいけば日本代表に滑り込むかもしれません。

東京オリンピックには間に合わなかったとしても、その翌年の2022年に陸上の聖地、アメリカ・オレゴン州ユージーンのヘイワード・フィールドで開催される世界陸上(オレゴン22)や、2024年開催予定のパリオリンピックでのトラック種目で活躍する彼らの姿があることでしょう。もしかすると、パリオリンピックのマラソン代表候補にチャレンジする選手もでてくるかもしれません。

彼らが上位入賞、さらにはメダルを獲得したとき、「ああ、あのとき箱根を走っていた彼だ」と思い返すことでしょう。そんな「ゴールデンエイジのお茶の間でのデビューレース」を見られるのが、今年の箱根駅伝なのです。

「すべては2021年の箱根駅伝から始まった」と後に語り継がれるはずの今回の箱根駅伝。

テレビの画面にこれまで以上に注目が集まるのは、間違いないでしょう。

西本 武司 「EKIDEN News」主宰

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にしもと たけし / Takeshi Nishimoto

『あまりに細かすぎる箱根駅伝ガイド!2021』監修。吉本興業、ほぼ日刊イトイ新聞を経て、一般社団法人OTT代表理事。「オトナのタイムトライアル」など新しいレースを企画する。走ること、見ることと多角的にマラソンレースを楽しむ。

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