日本人は「移民は優秀な人」だとわかっていない 出口治明×上野千鶴子「働き方を変えるには?」
残業手当の割増を高めれば残業は減る
上野 千鶴子(以下、上野):働き方を改善するためにはどうすればいいのか。私がかなり前から提案している処方箋は3つあります。1つは定時退社。
出口 治明(以下、出口):残業しないということですね。
上野:そうです。残業時間を減らすなら、残業手当を最初の1時間から賃金を5割増しにすればいいんです。そうしたら企業側が定時で帰れと言うようになります。
ところが働き方改革でホワイトカラーエグゼンプションが出てきました。労働時間ではなく成果で評価するという制度ですが、今後テレワークが増えると、夜中まで働こうが自己管理しなさい、となることも考えられますから、結局、骨抜きにされる可能性が高いです。
2つ目が年功序列給与体系の廃止、そして3つ目が同一労働同一賃金です。これだと転退職が不利になりません。
出口:僕もその3つには大賛成です。
上野:2020年4月から同一労働同一賃金が法制化されるようになりました。同一労働同一賃金はそもそも正社員と非正規雇用者の待遇差をなくすための制度ですが、厚生労働省が作成した基準で試算したところ、時給1000円程度の労働賃金の評価額がやや上がりましたが、それでも1300円台と大して変化がありませんでした。謎は換算方式の中にある、評価係数。非正規労働者の評価係数を根拠もなく8掛けにしていました。
それを見てびっくりしました。これなら最低賃金1500円のほうがマシ。
時給1500円で年間2000時間働けば、年収300万円を確保できますからね。ヨーロッパの計算方法ではこんな8掛けの評価係数などありません。つまり「同一労働同一賃金」という理念は導入するが、計算法を変えることによって官僚が換骨奪胎しているんです。
出口:官僚が忖度したのですね。
上野:どう逆立ちしても一定の水準を超さないように誘導しているようです。