日本人は「移民は優秀な人」だとわかっていない 出口治明×上野千鶴子「働き方を変えるには?」
出口:さらに、働き方を変えるために必要なことは、人口の増加と高度成長を前提とした「新卒一括採用、終身雇用、年功序列制、定年」というワンセットのガラパゴス的な労働慣行の廃止に向けて動いていくことです。これにより、労働が流動化します。
上野:流動化することにどんな利点がありますか?
出口:まずイヤイヤ働かなくてもよくなります。イヤなら辞めて別の会社や仕事を探せばいいのです。そうやって労働が流動化することは、企業のダイバーシティ(多様性)を促進します。それは企業にもメリットがあるのです。
歴史的に見て、イノベーションは、人の交流が盛んで、多様な人たちが行き交った場所、時代に起きています。いろんな文化や伝統が混じり合うことで、人間の考える力が豊かになり新しい発想が生まれるのです。
移民国家になるという選択肢は検討されていい
上野:留学生も積極的に採用すればいいですね。人口問題、人手不足という点から考えても、移民国家になるという選択肢はもっと検討されていいでしょう。
出口:まずは留学生から始めるのがいいと思います。若い時は感受性が鋭いのです。18歳と30歳を比べたら、18歳のほうがいろんなことに影響を受けやすい。
若い時に日本の大学に来てもらったら、日本を好きになるし、柔軟性もあるから理解も早いのです。
上野:その人たちにそのまま日本に定着してもらうような積極的な政策が必要ですね。彼らは、出身国では階層が高い人たちです。しかも日本の国内で教育を受けているから、最高の人材です。この人たちを日本の経済に取り込まないのは、損失です。
出口:立命館アジア太平洋大学(APU)の国際学生は、労働市場ですでにかなりの人気を集めています。英語入試で入ってきますから母国語に加えて英語が話せますし、日本語もAPUで鍛えています。日本の大企業はもはや日本だけではやっていけなくなって、アジアに出て行っていますから、APUの学生を採用したいのです。
上野:現地に進出するために。
出口:はい。ただそれだけではなくて、現地と本社をつなぐ人材としても欲しいのです。
上野:確かに。