衛生職種からも、急患搬送に固定翼機を使う機会はあまりないという指摘がある。災害時に固定翼機を使うとすれば、被災地域の医療機関において慢性疾患で加療中の患者を、他地域の医療機関に転送する場合だ。ヘリのほうが小回りは利く。また、不整地運用ができないC-2では東日本大震災での仙台空港のように滑走路が損傷した場合に、臨時管制で離着陸できない。
現在、航空機動衛生隊はC-130で患者空輸を行っている。C-130では機動衛生ユニットを2セット、C-2では3セットで輸送可能などとしているが、3連ではユニットのドアの開閉が困難となりトイレにも行けないという指摘もある。
航空機動衛生隊は、アメリカの外国の戦地から本土に患者を運ぶ制度を真似して導入したもので、狭い日本の運用に合わない。災害時の患者を固定翼輸送機で迅速に空輸するという理屈で作ったが、東日本大震災でも活用は1回のみだ。
数年先にコロナ禍が今よりも悪化しているのか?
そもそもC-2を発注しても完成するのは数年先で、コロナ禍が今よりも悪化しているとはなかなか考えにくい。仮にそのような心配をしているならば、なぜ東京オリンピックについて現時点で中止の決定にしないのは道理が立たない。
実は空自には似たような「前科」がある。先の東日本大震災の震災復興特別会計で、C-2を2機、400億円で発注している。当時C-2は不具合が続出して開発が遅れて採用にすら至っていなかった。無論これが災害復興の役に立ったことはなかった。
しかもC-2は費用対効果が悪い輸送機だ。財務省の公開資料によれば空自のC-2輸送機の維持費はF-35Aより高い。これによればC-2のCPFH(Cost Per Flight Hour:飛行時間当たりの経費)は約274万円、米空軍のC-130Jが約61.8万円、C-17が約150.9万円(1ドル/112円2030年度支出官レート)である。
C-2のCPFHはC-130Jの4.4倍、C-17の1.8倍にもなる。ペイロード1トン当たりのCPHFで比較するならばC-2のCPFHは10.5万円(26トン)、C-130Jは3万円(20トン)C-17は1.96万円である。つまりC-2のペイロード1トン当たりのCPFHはC-130Jの約3.5倍、C-17の5.4倍と比較にならないほど高い。
調達単価も来年度の防衛省概算要求では1機225億円で、ペイロードが3倍近いC-17に匹敵する。C-2の維持費は輸送機としては極端に高いことがわかるだろう。調達単価、CPFHの面からもC-2は極めてコストが高い。
このような費用対効果の怪しい輸送機をコロナ対策として補正予算で調達するのは、本来予算が必要な医療関係者や困窮する国民、事業者に必要な予算を収奪するに等しい。
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