新聞などが来年度の防衛予算政府案を5兆3422億円と報じている。だが、実際の防衛予算はそれより、3867億円多い5兆7289億円だ。
これは本年度の第3次補正予算がほぼ来年度の防衛予算の不足を補う「別腹会計」と化しているためだ。つまり本来来年度予算に計上しなければならない予算を、前年度の補正予算の形をとって補っている。
これはグローバルホーク、オスプレイなどのアメリカ製の高額な兵器をFMS(有償対外軍事援助)で調達しているために、防衛予算が圧迫されて、本来必要な他の装備や、燃料を含む必需品、整備費などの予算が圧迫され、それを手当てするためとみられる。
もしも、それらの費用をすべて来年度の防衛予算として要求すると以前と比べて防衛費が膨張する。そうなれば社会からの批判を受ける。それを避けるためだろう。第2次安倍政権からこの手法は用いられており、防衛予算を実際よりも過小に見せている。知ってか知らずか、新聞、テレビ、通信社などの記者クラブメディアは、防衛省の公式発表だけを報じており、ちゃんと検証しているかどうかわからない。これは防衛予算に限ったことではない。
概算要求5兆4879億円も額面通りに受け取れない
ちなみに防衛予算は先に概算要求が決定され、それを検討したうえで政府案として国会に提出される。本年は例年よりコロナ禍による混乱で1カ月遅れて9月末に来年度の防衛概算要求が発表された。その金額は5兆4879億円だ。
この概算要求も額面通りに受け取れない。これまた第2次安倍政権以降、米軍費用などの一部費用を「事項要求」という項目にして金額を計上していない。
ちなみに2020年度の概算要求での「事項要求」の政府予算案で明らかになった金額は米軍関連費用、防災・減災、国土強靱化のための3カ年緊急対策として2445億円である。2021年度政府予算案で明らかになった「事項要求」はSACO経費144億円、米軍再編関係経費のうち地元負担軽減分として、2,044億円、内閣官房及びデジタル庁(仮称)へ振り替える経費217億円、合計2375億円となる。
つまり、本来の来年度概算要求の本来の金額は5兆7,256億円となる。報道で「防衛省来年度概算要求、5.7兆円」と報道されていたら、これまた世論を刺激していたに違いない。
テレビや新聞といった記者クラブメディアが、このような仕組みを国民に知らせている様子は見受けられない。
補正予算は本来、予算編成および成立時には予見しなかった予備費でも対応できないよう支出を手当てするものである。たとえば防衛省では大規模な災害派遣や為替の急激な円安などによって燃料や装備の価格が急騰した場合に対応する費用などだ。
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