3867億円という金額は来年度予算の6.7パーセントにすぎない、という見方もあるだろうが、防衛予算の多くは人件・糧食費、米軍費用など固定費用が多い。装備調達に使える予算は約1兆円にすぎない。そう考えれば3867億円の「買い物予算」がいかに大きな金額かわかるだろう。
補正予算で手当てするならば衛生職種の増員がまだしもマシだろう。自衛隊にコロナ禍対処で動員できる衛生職種の隊員はほとんどいない。
部隊に配備されている医官の充足率は2割程度だ。護衛艦は定数に入っている医官が海外に派遣される艦以外乗艦していない。駐屯地などでは薬剤官が鎮痛剤胃薬などの売薬を配っているレベルで、隊員の健康管理もろくにできない。
中谷元氏は防衛大臣時代、筆者の質問にこう答えている。
「自衛隊病院または方面隊等の衛生部隊であり、必ずしも全国の駐屯地医務室に配置しているわけではありません。この理由は、自衛隊医官に求められるものは事態対処時における後送病院、後方の病院において、負傷者に対する高度の医療を提供する必要があるために、普段より技能の維持・向上を図る必要があるためであります」
であれば部隊になぜ医官の定員があるのか。実態は少ない医官を病院に集約し、病院を回しているだけだ。人体に例えるならば血液が不足して、いちばん大事な頭部に血液を集めて、手足が壊死しているような状態だ。
自衛隊病院ですら医官も看護官も少ない
それでも自衛隊病院ですら医官も看護官も少ない。また、看護官の定員は約3000名だが約1000名しかいない。全国に16ある自衛隊病院に対して平均して62名でしかない。 日本の基準では看護師1人が看られるのは患者3人までだ。
500床の自衛隊中央病院に対して65名、200床の自衛隊阪神病院に対して30名、200床の自衛隊札幌病院に対して30名で、実は夜勤シフトを組めないほど人手不足が深刻だ。だから大阪や旭川から派遣要請を受けても10名程度しか派遣できない。今は正面装備を買い揃えるよりも衛生職種の充足率向上に予算を振り向けたほうがいいだろう。
このように予算を少なくみせることが恒常化すれば、事実上予算審議は2つに分割され、国会において次年度予算を巡ってのまともな審議ができなくなる。また財政支出も歯止めがかからずに、抑制も難しくなる。なによりも国民が知らないところで防衛費が実質増額されているのは極めて大きな問題であり、法治、文民統制上看過されていい話ではない。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら