イオンシネマが子ども映画を重視するワケ 『劇場版 ゆうとくんがいく』に込められた戦略とは

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「こどもの映画館シリーズ」をどんどん出していきたい

――子ども向けアニメと言えば、シリーズ化されて成長するものが多いと思います。将来的にシリーズ化するようなアニメを作ろうといったお考えはありますか?

それは当然ありますね。とにかく今までは、いろいろなジャンルの作品をやってきましたが、そのうちで、シリーズでいけそうなものが2つ生まれました。ひとつが先ほどお話した『れっしゃだいこうしん』シリーズ。もう6作品を作りました。最初は本当にお客さまが少なくて「失敗したな」と思っていましたが、2回目をやってみたところ、前回よりは入った。それからは、やっていくごとに、いろんなものを改善していって。そうすると、それだけお客さまが入るようになったのです。

ただし、これは前に映画を見た子どもたちがそのまま、また来るわけではないわけのです。結局、多くの子どもたちが電車の趣味を卒業してしまうわけですから。それから次の世代にリフレッシュされるまでのちょうどいいタイミングが1年である、ということにも気づきました。それから1年ごとにやっていくわけなのですが、やはり数字が上がっているのです。それは宣伝の仕方を覚えたということもあるかもしれません。まずはこれがひとつ。

そしてもうひとつは「こどもの映画館シリーズ」です。前回は『沖縄美ら海水族館』を取り上げたのですが、この座組で第2弾を近いうちにやろうと思っています。それから夏が終わったら第3弾、第4弾というものも想定しています。もちろんドキュメンタリーにこだわっているわけではないのですが、自然と今、そんな感じになってきています。

――イオンシネマといえば当然、ファミリー路線が基本ラインだとは思います。その一方で、IMAXが人気を集めるなど、高付加価値化の波が来ているように思います。そのあたりの考えを教えてください。イオンシネマでは、幕張などに巨大スクリーンのULTIRAや、高音質のドルビーアトモスなども投入されています。

劇場のスペックも含めてお客様を呼ぶことはもちろん重要なことなので、取り入れるところは取り入れて。その努力は惜しまないようにはしています。

高級感という意味では、どちらかといえば、コンテンツのほうがそういったことは意識しているのかもしれません。たとえばイギリスのロイヤルオペラハウスから、バレエの中継を行ったりとか。少し着飾った方々が来るような、そういったライブビューイングのようなものも、取り組みのひとつとしてやっています。もちろんコンテンツによるのですが、オペラや落語なども上映してきましたし、これからもそういった動きは継続していこうと思っています。

(撮影:梅谷 秀司)

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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