引用文の2つめの段落の最初の文ときたら、6単語のうち、3つはアモーレから派生している。名詞に過去分詞、そして動詞にまで使われており、まさに愛の文法がその短い一行に凝縮されているのだ。
それを踏まえた上で、きちんと意味のある文章を作り上げ、かつしっかりと韻を踏んでいるダンテ先生、彼の魔法の筆からスラスラと出てくる言葉の巧妙さについて、今さら何かをコメントする必要はあるまい。
フランチェスカが語る最初のキス
フランチェスカの話に興味をそそられたダンテは身を乗り出して、2人が地獄に落ちた理由について根掘り葉掘り聞いていく。そして彼女は自らの運命を狂わせたその最初のキスに思いを馳せる……。
esser basciato da cotanto amante,
questi, che mai da me non fia diviso,
ランスロットが夢中になってずっと求めていた
グィネヴィア王妃の口を覆う、そのくだりを読んでいたの
ちょうどそのとき、いまでも離れることがない彼は
Galeotto fu 'l libro e chi lo scrisse:
quel giorno più non vi leggemmo avante».
震えながら私に接吻したのです
私たちの背中を押したのは、その物語とそれを書いた人
その日はもうそれ以上読み進めることはなかったわ
2人の初キスを捉えた絵画はたくさんあるが、このような官能的で美しい文章が数多くのアーティストの想像を掻き立てたのには頷ける。美しくて若い2人は同じ部屋で静かに本を読んでいる。物語にどんどんと引き込まれて、主人公たちの唇が重なる瞬間は、2人の接吻に反復されている。
ダンテ先生本人は、いろいろなところで自らのミューズであるベアトリーチェに対して情熱的な言葉を書き連ね、結婚した後も彼女を依然として崇拝し続けるのだが、やはり文学に絶賛されたからといって、不道徳な恋が決して許されるわけではない。
そのような教訓を強調したかったからこそ、フランチェスカに物語のことを言及させたとも言われている。それを聞いた師匠は一瞬だまり、考え込んでしまうが、認めたくなくても、美しくて可憐な恋も罪であることを改めて確信するのだ。
地獄に落とされた代表的な人たちが自らのストーリーを語る場面はたくさんあるが、フランチェスカのモノローグはその最初の一例である。ダンテは少し質問を挟むものの、彼女の口から放たれる感情的な言葉を遮ることをしない。愛しいパオロも、一言も喋らないで、彼女の隣ですすり泣きし続けるだけだ。
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