「会社にしがみつく男性」を蝕む大きな勘違い 年末年始に考える仕事、家庭、遊びのバランス

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職業以外のポイントカードを持つことは、仕事の場でも重要になっていくはずです。現在、多くの企業でダイバーシティー推進の取り組みが行われ、誰にとっても働きやすい職場環境の整備が目指されています。専業主婦やパートの妻がいる男性正社員が、「無限定に働く」という時代は終わりつつあります。

仕事だけをしている人にとっては、会議の時間が少しぐらい伸びたとしても何も問題はないでしょう。しかし、家事や育児、あるいは、介護をしながら限定付きで働く人にとっては、会議が予定どおりに終わらないことは大問題です。

休日出勤をする場合には、さまざまな調整が必要になります。家庭や地域で役割を担っていなければ、そうした苦労について実感を持って理解することはなかなか難しいものです。逆に言えば、複数のポイントカードを持つ人が、とりわけマネジメントの面において能力が高いと評価されるようになる可能性が高いと言えます。

何も考えずに企業社会だけで生きる問題点

簡単にまとめてしまえば、ここまでしてきた話は、ワークライフバランスの重要性についてです。この言葉が使われるようになってから10年以上が経過しました。いまさら感があるのは否めません。ただ、この十数年で、中高年男性の長時間労働が改善されたかといえば、残念ながら働きすぎは相変わらずです。

当然のことですが、そのため、家庭や地域で過ごす時間もあまり増えていません。言葉の陳腐化だけが進み、状況はあまりよくなっていないのです。結局のところ、キャッチフレーズを作り、問題意識のない人に改革を迫ってもあまり事態は変わらないということだと思います。

仕事中心の生活が長く続くと、企業社会を社会全体だと思い込んでしまって、その結果、家庭や地域で鬱陶しがられる“勘違いおじさん”になってしまう。そうした視野の狭い年配の男性は、これから多様な人が一緒に働く職場では通用しなくなる可能性が高い。厳しい現実を突きつけたかもしれませんが、それは中高年男性の方々に、自分の現状に対して問題意識を持ってもらうためです。

ここでは職場だけではなく、家庭や地域で「ポイントカード」を作ることをおすすめしましたが、そうした生き方をするべきだと強いているわけではありません。結局のところ「サラリーマン的な生き方の危機」という文脈では、何を「生活の中心」に置くのかが問われており、それを考えもしないことが最大の問題なのではないでしょうか。

仕事で忙しい日々を過ごしているとなかなかわが身を振り返る機会もないと思います。自分が人生で何を大切にしたいのかについて、ぜひこの年末年始で考えてみてください。そうした思索がみなさんの2021年以降の生活を明るくするものだと信じています。

過去連載同様、田中先生へのご相談も受け付けております。ご相談のある方はこちらの投稿フォームへ。
田中 俊之 大妻女子大学人間関係学部准教授

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たなか としゆき / Toshiyuki Tanaka

1975年生まれ。2008年博士号(社会学)取得。武蔵大学・学習院大学・東京女子大学等非常勤講師、武蔵大学社会学部助教、大正大学心理社会学部准教授を経て、2022年より現職。男性学の第一人者として、新聞、雑誌、ラジオ、ネットメディア等で活躍している。

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