「子犬のかみつき」に悩む人が知るべき6の方法 飼い主のエゴを押し付けずに「欲求」を解消する

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とにかく、知らない人や、知らない犬や、知らない刺激に囲まれて、1時間程度過ごすというのは、子犬にとっては衝撃的な体験となるでしょう。帰りの車では大体寝ていますし、「パピークラスの日は、家のなかでもおとなしいです」という声をいただくことは定番となっています。社会化を促進し、飼い主が必要な知識を身につけるためにも必ず参加しましょう。

犬と飼い主の信頼関係を育む

⑥トレーニングをする

最後に、飼い主が子犬とトレーニングをすることも忘れてはいけません。トレーニングは、飼い主と犬の間に共通言語を作るプロセスであり、その共通言語を使って会話を楽しむことです。

犬は飼い主の家に来た時点では、まったく言葉の通じない外国に来たようなものです。飼い主が何を考えているのかわからず、自分が何を求められているかもわからない、不安な状態です。トレーニングは日々の生活のなかで、犬と飼い主の意思疎通の質を高めるツールを提供します。

トレーニングは、オスワリ・フセ・マテ・オイデ等の特定の行動を教えることだけが目的ではありません。共通言語を作ることが第1段階の目標ですが、最終的な目的は、共通言語を使って犬との会話を楽しむことであり、犬との会話を通じて、犬と飼い主が信頼関係を育むことです。

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トレーニングしていない犬と飼い主は、同居はしているけど会話の少ない夫婦のようなものです。必要な時だけ、「おい、飯だ」「おい、茶だ」「おい、風呂だ」と伝えているような感じです。

トレーニングは、飼い主と犬の会話であり、「今日〇〇があってね、楽しかった」「そうなんだ、それは良かった。私は……」といったような、他愛のないコミュニケーションを楽しむものです。必要のない会話を楽しめてこそ、家族として生きる意味があります。

犬は社会的な動物であり、群れに所属することで、安心感を得られます。それは人間も同じです。家族という群れのなかで、会話のない夫婦は信頼関係が崩れていき、双方に不安や不満を生みます。犬と飼い主も会話がなければ、犬は社会的な所属感を得ることができず、不安や不満を生み、欲求不満となります。

子犬の場合、まずは共通言語を作る部分のトレーニングからですから、成果が見えやすく、取り組みやすい段階です。まずは、共通言語を作り、そのうえで、会話を楽しむためのトレーニングを実践していきましょう。

奥田 順之 獣医師

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おくだ よりゆき / Okuda Yoriyuki

獣医行動診療科認定医/ぎふ動物行動クリニック院長/特定非営利活動法人人と動物の共生センター理事長。犬猫の殺処分問題の解決を目指し、2012年NPO法人を設立。犬と人の関係性改善に向け、ドッグ&オーナーズスクールONElife設立。2014年ぎふ動物行動クリニック開業。スクール全体で年間約3800組(のべ数)の犬と飼い主の指導を実施。行動診療では、年間約100例の新規相談があり、トレーナーと連携した問題行動の治療を行っている

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