プロ引退1年、森福允彦を今も支える2つの武器 ホークス、巨人に在籍し、33歳で戦力外通告
引退してから初めての日本シリーズで見えたもの
2020年の日本シリーズ。福岡ソフトバンクホークスと、読売巨人軍との頂上決戦は、かつて球界の盟主とうたわれた巨人を、ソフトバンクが一方的にたたきのめすという図式に終わった。2年連続、同カードで、いずれもソフトバンクの4勝0敗。もちろん巨人はリベンジを目指して1年間、準備をしてきた。しかし星取りは同じでも、むしろ差が開いたのではないかとさえ思える一方的なシリーズに終わった。
ファンもメディアも、球界内部の人たちも、この結果に衝撃を受け、分析、評価をし、ああでもないこうでもない、の野球論を戦わせた。もちろんこれこそがプロ野球の存在意義であり楽しみだ。が、野球評論家でありながら「ちょっと複雑でしたね」と、周囲とは違った感覚でこの戦いを見つめていた男がいる。森福允彦だ。
2007年から10年間、ソフトバンクに在籍し、2017年から3年間は巨人のユニホームを着た。両チームを知る男。2019年限りで引退を決意し、今年から福岡に拠点を戻してテレビ、ラジオでの評論家デビューを果たした。勉強家だ。修羅場もくぐってきた。ソフトバンクの勝因、巨人の敗因、ポイントとなった試合や選手起用など、森福ならではの視点から、この実力差の理由を測っていたのではないか。
しかし本人はそれを、否定した。いや、たぶん正確にはそうした分析も無意識に行っていただろう。ただそれ以上に、引退して初めて見る日本シリーズ。しかも両方とも在籍経験のある球団だ。
どうしても「一緒にプレーしていた選手が多いので、どちらのチームを応援する、というのはありませんでしたけど、1プレー、1プレー、菅野が頑張ったら菅野に拍手しますし、千賀が投げれば千賀を応援していましたね」と、友人目線で元同僚たちにエールを送る自分がいた。
そして「一ファンとしての応援。野球が大好きで、全試合、本当に楽しかったですね」という、気付きもあった。