プロ引退1年、森福允彦を今も支える2つの武器 ホークス、巨人に在籍し、33歳で戦力外通告
2月に入ってほどなく、古巣のキャンプ地を訪れるなど、新生活をスタートさせた。ただ今年は、新型コロナウイルスの感染拡大とタイミングが合ってしまった。開幕は約3カ月の延期。それでも開幕日未定のまま、行われた練習試合などで解説者デビューも果たした。
とにかく前向きだ。2019年まで、野球漬け。学びと並行して「1年はゆっくりしたいな、というのはありましたね」というのは本音だろう。コロナ禍も「そういう時間」と捉え、自身の将来について「じっくりと考える時間を取ることができました」という。
開幕以降もテレビ、ラジオの仕事をこなす。「試合展開をつかんだり、配球を読んだり。そういう勉強をしているところですが、まだまだと感じています」という。新たな挑戦に取り組む一方で、「独身なので時間はありますからね」と話し、コロナから距離を取れる余暇として、今まではオフにしかできなかった大好きなゴルフも満喫している。
もちろん、こうして自由を楽しめる時間が限られていることもわかっている。個人の自由より、球界への恩返し、できれば指導者としてこれまでの経験を若い選手たちに伝える仕事を優先したい。
現役の13年間は「本当に楽しかった」
「武器」はそろいつつある。アマチュア時代の野村克也、プロ入り間もなくの鳥越裕介をはじめとする、多くの指導者や同僚を通じて得た知識。そして自身の経験。さらには、森福ならではのポジティブな世界観もある。
いまだに振り返られる場面。2011年、中日との日本シリーズ第4戦。1点リードの6回無死満塁でマウンドに上がり、この絶体絶命のピンチを無失点で切り抜けたシーンは「森福の11球」として語りぐさとなっている。
こうした数々の武勇伝がある一方、ラストシーズンとなった2019年6月21日には、巨人の投手として、交流戦で古巣と対戦する。こちらも6回。同点の2死満塁で、同期入団の福田秀平に痛恨の勝ち越し満塁弾を許した。これが最後の登板となった。強烈な終焉(しゅうえん)。
しかし、森福は現役の13年間を「本当に楽しかった」と振り返る。「ホークス時代の10年間も、ジャイアンツでの3年間もすべてです」と言い切った。もちろん「つらいことはありましたよ。でもそれもポジティブに受け止めれば、必ず後になって楽しいことが来ますから」というのが、森福ならではの発想だ。これもまた、これからの「武器」となるのではないか。
「僕は(アマチュアの)スターとしてプロ入りしたわけではない。敗戦処理も含めて、いろんなポジションを経験しました。そういうところからはい上がったという経験は、伝えていけるんじゃないでしょうか」
始まったばかりの、森福の第2の野球人生。これからも恵まれた出会いと、ポジティブな思考で、より彩り豊かなものとなっていくことだろう。
(文中敬称略、文:西下純)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら