「クイーンズ・ギャンビット」超話題3つの理由 天才チェス少女描くNetflix2020年ヒット番組

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また試合中の「ゴトッ」「カチカチッ」といったチェスの効果音は時にテンポよく、時に緊迫感を高めています。これは本作の企画者であり、全話の監督と脚本を手がけ、二度アカデミー賞にノミネートされたこともあるスコット・フランクの手腕によるものです。無駄なフレームはないと言ってもいいほどで、視覚で訴えかけていきます。例えば、ベスがチェスプレーヤーとして自信をつけていくさまは衣装に色濃く反映させ、その変化が楽しめます。オシャレになったベスにチェッカーボード柄を絶妙に採り入れているあたりは「やっぱりチェスが好き」と言わんばかりです。

養母・アルマ(マリエル・ヘラー・写真左)とゆっくりと紡いでいく母娘の絆は、全7話の中でベスの心の成長を描く見どころポイントのひとつ(写真:Netflix)

せりふよりも映像重視の作品であるからこそ、そのノンバーバル感がチェス好きでなくても、どの国でもヒットしているのだと思うのです。その影響力は高く、同名タイトルの原作小説は出版後37年を経て、ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーに登場し、Googleにおけるチェスに関する検索数が2倍になり、「how to play chess (チェスの遊び方)」のキーワード検索は過去9年間で最多を記録したそうです。

チェスの売り上げは170%増加

また経済効果も生み出しています。オークションサイトeBayでは「chess sets (チェスセット)」の検索数が250%増加し、老舗のボードゲームメーカーGoliath Gamesではチェスの売り上げが170%増加したことがNetflixから発表されています。本作を見ていると自分もまるでチェスを指せるかのような気分にさせてくれるのですが、オンラインチェスのChess.comでは新規プレーヤー数が5倍に増えたとか。

あるようでなかった天才チェス少女のドラマの効果は計り知れず。海外ドラマによくある続きがあるような終わり方では決してないスッキリ完結で、ハリウッドの王道のスタイルとNetflixらしい最新の映像美のバランスがいい『クイーンズ・ギャンビット』は見る人を選ばない作品であることは間違いないです。

長谷川 朋子 コラムニスト

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はせがわ ともこ / Tomoko Hasegawa

メディア/テレビ業界ジャーナリスト。国内外のドラマ、バラエティ、ドキュメンタリー番組制作事情をテーマに、テレビビジネスの仕組みについて独自の視点で解説した執筆記事多数。最も得意とする分野は番組コンテンツの海外流通ビジネス。フランス・カンヌで開催される世界最大規模の映像コンテンツ見本市MIP現地取材を約10年にわたって重ね、日本人ジャーナリストとしてはこの分野におけるオーソリティとして活動。業界で権威ある「ATP賞テレビグランプリ」の「総務大臣賞」の審査員や、業界セミナー講師、札幌市による行政支援プロジェクトのファシリテーターなども務める。著書は「Netflix戦略と流儀」(中公新書ラクレ)。

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