国債は「国の借金」か--個人の草の根投資が財政規律を回復させる

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草の根レベルで景気対策

結局、個人投資家がリスクを取ることを極端に嫌う結果、ゆうちょ銀行を含めた銀行や保険に資金が集まり、その資金が国債市場の支えになっているとも言えるのです。

しかし、個人が金融資産全体の中のごく一部でも株式などのリスク資産に割り当てるようになれば、株式市場も活性化するでしょうし、また、政府の財政規律も強化されるのではないかと思います。

現在、株式市場の時価総額(東証1部)は300兆円程度です。個人の金融資産のほんの少しでも市場に流入すれば、かなり活気づくことになるでしょう。その結果、企業ももう少し元気になり、前向きの投資にも踏み切れるようになるかも知れません。

また個人も、持っている株式や投信が値上がりすれば、もっと消費をするようになることでしょう。それによって公共投資への依存度を低下することも可能になります。

もちろん、政府、金融当局が景気を立ち直させるために努力をすることは大切ですが、もう少しわれわれ個人が投資でリスクを取ることも大切なのではないかと思います。そうなれば、回り回ってわれわれの生活をよくしていくことにもなるのではないかと思います。

これは草の根レベルの景気対策ともいえるのではないでしょうか。

岡本和久(おかもと・かずひさ)

I-Oウェルス・アドバイザーズ株式会社 代表取締役社長 1971年慶應義塾大学卒。日興證券でニューヨーク現地法人、情報部などで証券アナリスト・ストラテジスト業務に従事。1992年、バークレイズ・グローバル・インベスターズ(現ブラックロック・グローバル・インベスターズ)の日本法人設立、社長として年金運用業務に携わる。2005年、個人投資家向け投資セミナーを行うI-Oウェルス・アドバイザーズ設立、社長就任。現在、同社でセミナー、資産運用教室などを開催する傍ら、全国の長期投資家仲間によるクラブ・インベストライフを主宰。 主な著書に「ミドルエイジのための資産形成マニュアル」(マイコミ)、「瞑想でつかむ投資の成功法」(総合法令)、「100歳までの長期投資*コア・サテライト戦略のすすめ」(日本経済新聞出版社)など。日本証券投資顧問業協会理事、同協会副会長兼自主規制委員会委員長、投資信託協会理事、日本CFA(CharteredFinancialAnalyst)協会会長(現在、名誉会長)などを歴任。経済同友会会員。趣味は太極拳、川柳、クラシック・ギター演奏(東京ギターアンサンブル代表)。BLOG「岡本和久のI-OWA日記」
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