苦難の鉄鋼メーカー、資源メジャーの大幅値上げに抗えず
異例の交渉決着だった。3月初旬、新日本製鉄など国内鉄鋼大手は、英豪系資源大手のBHPビリトンと鉄鋼の主原料である原料炭の2010年度の輸入価格で合意。従来の年度ごとの契約が、今回初めて4~6月のみの四半期契約となり、前期比55%増(1トン当たり200ドル)という大幅値上げをのんだ。
もう一つの主原料である鉄鉱石も価格交渉が大詰め。ブラジル資源大手ヴァーレが各社に前期比9割の値上げを提示し、こちらも四半期ごとの値決め方式導入を打ち出しているようだ。
09年度の交渉では、鉄鉱石で前期比約3割、原料炭で約6割という大幅値下げを勝ち取った鉄鋼各社。だが10年度は、中国など新興国の景気刺激策により鉄鋼需要が拡大。原料高に苦しんだ08年度の水準に逆戻りしそうだ。
自社権益に活路だが
交渉妥結における重要なポイントは、四半期契約の導入にある。年度契約ならば価格を固定できるが、四半期で区切られると、今後の市況次第で再値上げを迫られる可能性がある。大和証券キャピタル・マーケッツの五百旗頭(いおきべ)治郎シニアアナリストは、「従来は年度ごとの契約を重視していたヴァーレが、今年2月の決算発表時に『国内の契約価格をスポット価格に連動させるべき』と発言した。これは衝撃だった。ヴァーレが寝返ったことで流れが変わった」と川上の異変を分析する。
結局、値決め方式の変更を一部で押し切られたが、そのまま自動車メーカーなど川下に強いれば、顧客の年間計画立案に影響を及ぼす。そのため、国内鉄鋼各社は、四半期契約の導入に消極的だった。