フランス人が決して「手料理」にこだわらない訳 貴族に嫁いだ女性が見た義母のエレガンス

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そして一旦停止をしたら、「もっと楽しいこと」をするのです。仕事の手を止めたのなら、少し散歩に出る。育児に疲れたら、子どもを誰かに預けるなり、テレビを見せるなりして、安全だけは確保し、自分の好きなことをするのです。動画を見る、でも、お風呂に入る、でもよし。

今の私の「もっと楽しいこと」は、日本に帰省したときに何をしたいか、計画を立てること。今現在はフランスも日本も感染者が多く、渡航を控えざるを得ない状況ですが、落ち着いた暁には、日本へ帰り、母と国内旅行をしたり、友達と会って美味しい和食を食べたり、本屋さん巡りをしたい。そういう楽しいことを考えたあとは、仕事に戻るにせよ、台所に立つにせよ、少し明るい気分で動けるのです。

エレガンスとは、「思いやり」を忘れないこと

ところで、ロックダウン中、家族の食事のために加工食品に頼った義母ですが、お礼することも忘れません。1回目のロックダウンが解除されたあと、パン屋と肉屋に、それぞれフラワーアレンジメントを贈ったそうです。

「医療関係者に拍手を贈るという労い方もあるのかもしれませんが、わたくしのスタイルではありません。それよりも、ほとんどの人が家で過ごしている中、毎日美味しいパンやお肉を粛々と提供し続けてくれた人たちに、きちんと『メルシー』と伝えるべきだと思いまして」

これが義母のいう、人間らしい思いやりを持つ、ということなのでしょう。義母が選んだ美しいフラワーアレンジメントを受け取ったパン屋のマダムは涙を流して喜んだそうです。肉屋のムッシュゥは、「J’ai fait mon métier(仕事をまっとうしたまでのこと)」と、謙虚に、そして誇らしげに応えたといい、それに対して義母は「C'est l'élégance!(これぞエレガンス!)」と感銘を受けていました。

みんながギリギリのところで暮らしています。そんな今だからこそ、人間らしい思いやりを持って生きる、すなわちエレガンスを持って生きるということが何よりも大切なのではないでしょうか。

ドメストル 美紀 文筆家

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Miki de Mestre

東京女子大学、INSEAD(旧欧州経営学院、フォンテーヌブロー校)卒業。航空会社、投資銀行勤務を経て、現在は執筆活動に勤しむ。日本のサラリーマン家庭に生まれ育ったが、ひょんな出会いから18世紀から続くフランスの伯爵家に嫁ぎ、ベルサイユにてフランス人の夫、男子二人、愛猫マエストロと共に暮らしている。主な著書に『どんな日もエレガンス』(大和書房)、『フランス伯爵夫人に学ぶ美しく、上質に暮らす45のルール』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。

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