クリスマスの代表的菓子「パネットーネ」の正体 イタリアでなぜこんなにも愛されているのか
中世の時代は今よりもっと寒くて、北イタリアでは小麦粉は貴重な食材だったから、小麦粉のパンはとてもごちそうだったというわけだ。日本がお正月に、晴れの日のごちそうとしてお餅を食べるのに、やっぱりちょっと似ている。ミラノ方言で「クリスマスのパナトン」と呼ばれていたものが、時を経て「パネットーネ」になった、というのが本当のところらしい。その頃にはまだ発酵種は使われておらず、普通のパンのように丸く平べったい形をしていたそうだ。
20世紀に入り、今では大企業となったパネットーネ会社「モッタ」の創業者がレシピと紙でできた型を開発し、今のような背高のパネットーネが生まれた。その紙の型のアイデアは、実はパネットーネより先に生まれていた、もう一つのクリスマスケーキ「パンドーロ」から得たというからおもしろい。
現在はスーパーでも気軽に買える
そんなパネットーネたち、現在ではスーパーマーケットに山積みになる10ユーロ(約1270円)以下のものから、高級パスティッチェリア(菓子店)で手作りされた30ユーロ(約3800円)も40ユーロ(約5000円)もするものまで、ピンキリだ(値段は一般的なサイズ750グラムか1キロのもの)。大量生産の安いものはおいしくないとは断言できないし、高いもの=おいしいとも限らないのだが、材料を厳選し、手をかけて焼き上げたパネットーネは、やはりとてもおいしい。
最近は特に「パネットーネ・アルティジャナーレ」がブームらしい。アルティジャナーレとは、職人の手作り、というような意味で、つまり機械による大量生産ではないということ。一流のパティシェやお菓子を得意とするシェフたちが、独自のレシピを工夫し、しのぎを削って作っている。おいしいパネットーネを作れるかどうかは、イタリアの菓子職人の間では「最後の戦い」というほど難しいといわれていて、自分の個性を込めたおいしいパネットーネを作り、評価されることは、トップパティシェの誇りなのだ。
細かいデコレーションも難しい形もしていないのに、最後の戦いといわれるのはなぜか。それは卵、バター、砂糖たっぷり、おまけに干しぶどうやオレンジピールもたっぷり入った重たい生地を、天然酵母の力とオーブンの火入れだけでふんわりしっとり、高く高く焼き上げるには、さまざまな知識や経験がなければできないからだ。
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