通学できず心が限界、深刻化する大学生の孤立 今年に入って休学や退学を考えた人が3割

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プロジェクトの仲間たちは「問題はメンタルが悪化しないかどうかだ」と考え、精神的な負担が生じないような取り組みを始めた。その1つが、オンライン上でアンケート調査をしたり、SNSで「コロナと大学」に関する情報を発信したりすることだ。

山本さんはこう話す。

「僕らの最終目標は、大学へ通えていない大学生に選択肢を持たせることです。インターネットを使用して授業を受けたい人は遠隔での受講を、対面式を希望する人は学内で教室の授業をできるようにしたい。今年度は残り少ないので、来年からなんとかそれを実現ができればいいと思う。

今の状態では、大学の友人に課題の相談すら難しい。顔すら合わせていないし、友人と呼べるかどうか。SNS上での繋がりしかありません。相手がどんな性格なのか、あまりわかりません。そんな関係の人と大事な相談ができますか?」

7割の学生が「友人と会えていない」

大学生対面授業再開プロジェクトは、大学生の現状を把握するため、9月9~18日、全国の大学生を対象としたインターネット調査を実施し、1518人から有効回答を得た。

「前期授業期間中、大学の友人に何人に会ったか(キャンパス外を含む)」という質問には、753人(49.6%)が「(1人も)会っていない」と回答した。「キャンパス内で」と場所を限定して同じ問いを投げかけると「会っていない」は1174人、実に77.3%に達した。この数字だけでも、大学生の“孤立”が見えてくる。

デメリットを問う質問では、「仲間と意見交換する機会が減少した」(71.5%)、「対面より授業の質が低下した」(56.3%)、「オンとオフの切り替えが難しい」(56.2%)といった回答が並んだ(複数回答可、以下同じ)。

さらに深刻な項目もある。オンライン授業下での精神状態を尋ねたところ、「やる気が出ない」(57.3%)、「理由はわからないがつらい」(41.0%)、「理由もなく涙が出る」(22.0%)、「眠れない」(20.8%)といった答えが軒並み上位を占めたのだ。「良好」とした大学生は20.2%しかいない。

自身の体験談を明かしてくれた水戸あやかさん(仮名)(写真:板垣聡旨)

大学生対面授業再開プロジェクトに参加する別のメンバーで、都内の理系の私大に通う水戸あやかさん(19歳、仮名)は自身の体験談を次のように明かした。

「前期の授業期間中、一度だけ大学の友達と直接会いました。午前11時くらいから午後6時過ぎまでいたのかな。ご飯を一緒に食べたりして。LINEで連絡を取り合っていて『もう無理だから会おう』となったんです。

とにかく家から出たかった。あの部屋から出たかった。製図の授業と課題も忙しくて……。大学へ通えなくなって、交友関係の範囲は狭くなっていたから、授業や課題のことを相談できる人もおらず、一人で抱え込んでいたんですね。友達と実際に会ったら、心が軽くなった気がしました」

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