身体や心と向き合う「コロナ禍のライフシフト」 自己実現派だった私が「生活」を取り戻すまで
例えば食事にしても、これまでは忙しすぎて、食べたものに対する体の反応に注意を払う余裕もなかったのかもしれません。食べ物と身体の関係について知っていることも、あくまで机上の空論。わかったようで実感が薄かったと思います。
外食も多かったですし、3食自炊するようになって、自分の口に入る食べ物に対して前より意識的になりました。「ああ、これを食べるとこういうふうに消化するんだ」というのがわかる。身体との距離が近づいたというのかな。そのことに気づく時間をもらっていると思います。
あまりに人との接触が少ないことを寂しく思うときもありますが、ニューヨークから友達が来たり、自分もたまには街に戻ったり。「しんどいな」と思うことがないとはいえませんが、振り返ってみるとこれまで惰性の社交も多かったことに気がついたり。仕事も生活も自分でコントロールする。そのことに対して意識的になりました。
「めいっぱい生きる」から変化したこと
この5年ほど、基本的にすべてのオファーや誘いに対して「YES」と言う、ということを心がけてきました。ロッキード・マーティンのCEOであるマリリン・ヒューソンにインタビューするチャンスを得たとき(拙著『ピンヒールははかない』)、彼女から、「女性には、何か大きなチャンスがめぐってきたとき、咄嗟に『できない』と考えてしまう傾向があると知ってから、すべてのオポチュニティに対してYESと言おうと決めた」という話を聞いたんです。
それで、自分もやってみようと思ったんですね。すべてのチャンスを「YES」と受け入れて、めいっぱい生きる。そして「あー、今日も1日楽しかった!」と、くたくたな状態で就寝できることが幸せだと思ってきました。
だけど、一方で、貪欲になりすぎてつい無理をしてしまうこともあり、健康のことは気になっていました。その中で、5年ほどはセルフケアやマインドフルネスに関心が向き、瞑想を生活に取り入れたり、関連の授業やワークショップに出たりするようになっていました。自分を知り、折り合いをつけ、心と身体の調和をはかる。インナーピースの重要性を知り、少しずつ、外よりも内に関心が向かっていたんです。
とはいえ、忙しい生活の中、どうしても片手間になってしまっていたことを、生活に根付かせるチャンスを得たことで、前より自分の身体と仲良くなれた気がしています。
せっかく時間ができたし、場所もあるので、今年の夏はハーブや野菜を育てたり、パンやピザを焼いたりもするようになりました。自分は家庭的なことは苦手だと思っていたのですが、やってみたら楽しいし、真剣にやらないと失敗します。ハーブだって、うっかりタイミングを逃したりするといちばんいいときに収穫できない。
手間暇をかけるということのおもしろさを初めて知り、たくさんのことを学びながら、これまで、自分の人生の中で、いちばん、足りていなかったのは「生活」だったのだと実感しています。
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