読書家なのに「教養がない人」がやりがちなこと 本を読むときの正しい読み方、読む順番とは

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例えば、「数学」に関する本はたくさん出ています。現代社会はネットやSNSでいろいろな意見や情報が溢れていますから、見極めるための論理性は必要でしょう。

普段から論理的にものを考えるクセをつけていないと、おかしなものに騙されたり、荒唐無稽な理論にハマってしまう危険もあります。その意味でも「数学的思考」は、今の世の中で大変重要な思考と言えます。

とはいえ、数学の領域は高度なものになると、まったくついていけないということもあるでしょう。段階を踏んで、簡単で入り込みやすい本から、次第にレベルをアップしていくことが必要です。では具体的に、どういう順番で読むと理解しやすいのか。順を追ってみていきましょう。

「数学的思考」を身につけるための読書法

数学の入門書として代表的なのは、数学者の秋山仁さんの諸作です。『秋山仁のまだまだこんなところにも数学が』(扶桑社文庫)など、たくさんの読みやすいうえに内容が深い著作があります。

また、いまベストセラーになっている『東大の先生! 文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!』(西成活裕/著 かんき出版)は、数学が苦手な人にも大変人気です。

多少数学的知識がついたら、次は『いかにして問題をとくか』(G・ポリア/著 丸善)に進みます。問題解決の手法を、数学的に解説した古典的な名著です。ポリアはハンガリー出身のアメリカの数学者で、同著の日本語訳が出たのが1954年ですから、もう60年以上も前になります。しかし、その内容は時代を経ても色あせることのない普遍的なものになっています。

問題を解くためには、まず問題の意味を正確に把握することが肝要です。そもそものところで間違ってしまっては、問題解決は望めません。問題を正しく理解するためには、論理的な思考が不可欠となります。

そのうえでどのような解法によって、どう説いていくか。その手順を頭の中でアウトラインを描きながら、実際にそれに添って解いてみます。その結果うまくいかなかったら、どこに問題があるのかをもう一度検証して、修正して再度解決を試みます。

この考え方は、ビジネスの現場でもよく使われる「PDCA」のサイクルとそのまま重なります。数学の解法という視点を通しながら、あらゆる問題解決の方法、その真髄を身につけるユニークな本です。

さらに、『フェルマーの最終定理』(サイモン・シン/著 新潮文庫)に進みます。フェルマーの最終定理とは、3以上の自然数nについて、Xn+Yn=Znとなる自然数の解は存在しないという定理のこと。フランスの数学者ピエール・ド・フェルマーが、自分が読んでいたギリシャ時代の数学書の余白に書いていた注釈が、死後出版されて有名になったものです。

フェルマーは「この定理に関して、私は驚くべき証明を見つけたが、この余白はそれを書くには狭すぎる」と書き残したままで、その内容については謎とされてきました。

以来、360年もの間、さまざまな数学者がこの難問に取り組み、その過程でまたいろいろな理論や予想が生まれ、数学界を盛り上げ続けてきたのです。そしてついに1995年、イギリスの数学者アンドリュー・ワイルズが証明を完成させます。

ワイルズ自身、数学者になったきっかけが子どもの頃に知ったフェルマーの最終定理だそうです。著者のサイモン・シンはそんなワイルズの話だけでなく、ギリシャのピタゴラスの話から始まり、フェルマー、レオンハルト・オイラーなど、最終定理と向き合う数学者たちの、さまざまな人間ドラマとして描き出します。

まさに知性の極北の戦いを描く壮大なストーリー。これだけの題材と数学者を扱いながら、難しい数式はほとんど出てきません。数学初心者でも抵抗なく楽しめる、素晴らしい作品になっています。一読すれば必ずや引き込まれ、数学に対する見方が大きく変わることでしょう。

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